「長崎市幹部による女性記者への性暴力訴訟」についての要請

長崎市長 田上 富久 様                 
「長崎市幹部による女性記者への性暴力訴訟」についての要請

2021年9月27日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)中央執行委員長
吉永磨美

 2007年に新聞労連の組合員である女性記者が長崎市の原爆対策部長(当時、故人)から取材中に性暴力を振われ、P T S D(心的外傷後ストレス障害)を患い、別の市幹部からは、当該組合員に責任を転嫁する虚偽の話を流布されて二次被害に苦しみ、入退院を繰り返してきました。長崎市は、当該組合員による人権救済の申し立てを受けた日本弁護士連合会から14年に出された謝罪と再発防止策を求める勧告に対し、受け入れに難色を示し続けています。新聞労連は19年3月、早期救済を求め長崎市との交渉の場を持ちましたが、請求権を放棄しなければ謝罪に応じない姿勢を示すなど不誠実な対応を続けたため、当該組合員は同4月、長崎市を相手取って損害賠償訴訟を起こしました。
 長崎市は自らが男女参画基本条例を定め、セクハラを防止する立場にもかかわらずそれを怠り、数多くの注意義務違反を引き起こしているのは明白です。さらに、「男女の関係だった」など虚偽の風説を流されるままに放置し、部長らを擁護することで、市に対する社会的批判や責任追求を免れるようとしてきました。裁判でも、長崎市はその姿勢を改めず、女性を性的対象視する「強姦神話」に基づいた言説を繰り返すことで、原告を二重三重に苦しめています。このような姿勢や発言は、原告にとどまらず多くの人を傷つけていることを自覚すべきです。長崎市内外の多くの性的被害者の尊厳を貶めるものであり、看過できません。これ以上の苦しみを被害者に負わせないでください。また、これらの言説は、市民の「知る権利」に奉仕する立場やジャーナリズムの役割を自覚し、報道機関が長年行ってきた正当な業務行為としての取材活動の否定にもつながり、この点においても、新聞労働者が連帯する組合として見過ごすことはできません。
 当時から現職である田上市長は、行政組織の最高責任者として、当該事案について重要事実を知り得る立場にありました。10月4日の証人尋問においては、平和都市・長崎市の行政を司るリーダーとしても、原告の訴えに真摯に向き合い、誠実に対応することを強く求めます。

                                                                       以上