MIC声明:沖縄・高江の記者拘束 政府容認の閣議決定に抗議する

2016年10月20日
日本マスコミ文化情報労組会議
議長 小林基秀

 今年8月、沖縄県東村高江やその周辺で、米軍のヘリパッド建設工事に抗議する住民・市民の活動を取材していた地元紙の琉球新報および沖縄タイムスの記者が機動隊によって強制的に排除され、理由も示されずに30分近く身柄を拘束されるという事件があった。こうした事態について、仲里利信衆議院議員が「民主主義の根幹を支える報道の自由を侵害 する極めて悪質な行為」として政府の見解をただす質問主意書を提出したところ、政府は10月11日、「警察の責務を達成するための業務を適切に行っており、報道の自由は十分に尊重されているものと考えている」などとする答弁書を閣議決定した。

 政府答弁書は記者の身柄拘束や市民の強制排除などの事実認定を避けているが、記者は機動隊に対し、腕章や社員証を示し、記者であることを告げ、取材を妨害しないように訴えおり、機動隊が記者と認識した上で、拘束した可能性は極めて高い。取材記者が機動隊員に取り囲まれ、行動の自由を奪われるという取材妨害を受けたことは紛れもない事実であり、「報道の自由は十分に尊重されている」とは到底言えない状態であることが明白だ。政府は、現地で警察・機動隊が行っている過剰警備、市民に対する暴力行為を即刻止めさせるべきである。

 ヘリパッドは高江の集落を取り囲むように建設する計画で、開発段階で事故の相次いだオスプレイが主に使用する「オスプレイパッド」とも言われている。完成後の運用について、防衛省から十分な説明はなく、地元の住民は実力での阻止を余儀なくされている。沖縄の人々は戦争のない社会と平穏な生活を願って平和的に抗議活動を続けているだけであり、これを法的根拠も明示せずに暴力的に排除することは憲法違反の人権侵害行為である。このような暴挙を容認する政府の態度についても、私たちは絶対に許さない。

 全国的に詳しく報じられることは少ないが、琉球新報や沖縄タイムスを含む地元メディアは、国の機関である沖縄防衛局が高江のヘリパッド建設工事現場周辺において、沖縄県側の同意なしに県道に金網を設置したことや、工事に反対する市民が県道区域に立てたテントを撤去して内部の物品を含めて持ち去るなど、法的根拠がない数多くの行為を告発する報道を続けている。今回の地元2紙の記者への暴力的行為は、日本における報道・表現の自由に対する重大な侵害行為にほかならず、すべてのメディア関係者にとって深刻な脅威となるものであり、政府の答弁書は容認できない。同時に私たちは、すべてのメディア関係者が沖縄のメディアに連帯して抗議の声を上げることを強く望んでいる。

以上