
新聞労連は、全国の新聞社や通信社など86の労働組合が集まる産業別労働組合です。設立は1950年で、2025年で結成75年を迎えます。組合員数は約16500人に上ります。86の労組には、全国紙や地方紙、専門紙、ネットメディアなど幅広い企業の労組が結集し、編集だけでなく販売、広告、営業、印刷、デジタル部門など多様な職場で働く仲間がいます。新聞労連の仲間には「新聞通信合同ユニオン(東京)」「関西新聞合同ユニオン(大阪)」「関西新聞合同ユニオン中国地方支部(広島)」という、個人加盟が可能な労組が3つあります。労組がない、または労組があっても新聞労連に未加盟の企業・団体で働く方やフリーランスのジャーナリストなどが加入しています。ぜひ、悩みを抱える方はご相談ください。
新聞労連の役割はまず、新聞業界で働く皆さんの働く環境を良くしていくことです。この空前の物価高の中で賃金をアップさせていかなければなりません。部数減に歯止めがかからず、新聞社・通信社は各社とも経営状況が厳しいのは事実ですが、そんな中でも2024年春闘、25年春闘と賃上げを勝ち取る加盟労組(単組)は増えています。ただ、物価高に負けない賃上げへは道半ばです。新聞業界では20年以上、賃金を抑制する流れが続いてきました。これまで減らされた分を取り戻し、さらに上積みさせていかねばなりません。新聞労連としては単組の方針を尊重しつつ、労連としての春闘方針を立て、各単組の闘争状況・好事例の共有や相談の受け付け、各種集会の開催などを通じ、単組が賃上げを勝ち取っていけるよう支援していきます。
「誰もが働きやすく、働きがいのある職場づくり」も重要です。新聞の職場では今なお長時間で過重な労働が蔓延し、ハラスメントも横行しています。背景には、新聞社・通信社の経営陣や管理職の意思決定層が、いわば昭和型といえる「古い働き方」を良しとする思考回路を更新できていないことにあります。また、この古い思考は、ジェンダー不平等が解消できない現状にもつながっています。
新聞業界の現状をみると、特に20代の従業員についてほぼ男女同数です。しかし、管理職・役員になると、他業界に比べ女性比率は著しく低いままの状況が続いています。フジテレビを巡る一連の問題は他人ごとではありません。ジェンダー平等が実現すれば、女性がより生き生きと働ける環境を作り出せることに加え、全ての人の働きやすさにつながります。また、ジェンダー平等を実現することで、新聞の記事やコンテンツの多様化を促し、社会に必要とされる新聞メディアの再構築にもつながっていくと考えています。
業界では若手や中堅の離職が続いています。新聞メディアの持続可能性にも関わる深刻な事態です。働き続けたい業界だと思ってもらう環境づくりは離職を止める前提です。賃金を上げることはもちろん、働きやすい職場、ジェンダー平等で風通しの良い職場をつくっていく努力も欠かせません。新聞労連は組合員とともに、現場の声を集めて働きやすい、働きがいのある職場づくりを進めていきます。
ジャーナリズムを守り、育てることも新聞労連の大事な役割です。政府や地方自治体、警察などが、記者の取材を制限したり、報道に介入したりする事案が絶えず起こっています。その都度、新聞労連は抗議声明を出し、集会を開催するなどして抗議の意志を示してきました。2025年は戦後80年の節目の年となります。戦時中、新聞が戦争を賛美し扇動する報道をしたことへの反省に基づき、新聞労連は結成時から「戦争のためにペンを取らない、カメラを取らない、輪転機を回さない」との誓いを共有してきました。戦争のない、核兵器のない世界を築くために取り組んでいきます。
新聞労連は、労連内におけるジェンダー平等に向けた取り組みも続けてきました。2019年から公募の女性組合員10人による「特別中央執行委員(特別中執)制度」を始め、もともと男性がメンバーの大半だった中央執行委員会に特別中執を加えることで、全体の3分の1が女性となりました。歴代の特別中執は、長崎市幹部による性暴力被害を受けた女性記者が同市に損害賠償を求めた訴訟の支援や、22年に発効した「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」の編集でも中心的な役割を果たしました。24年秋には、特別中執の活動を発展させ、業界内でのジェンダー平等に向けた具体的な道筋を検討するため「ジェンダー研究部」という専門部を設け、男女の組合員約10人が活動しています。
新聞業界で働く全ての皆さんのために、ジャーナリズムを担う全ての皆さんのために、新聞労連は力を尽くしていきます。ぜひ、活動にご注目ください。
新聞労連中央執行委員長 西村誠(共同通信労組出身)