
新聞労連はこれまで、連合や全労連といったナショナルセンターに加わらず、中立の立場で労働運動に取り組んできました。全国紙や地方紙、スポーツ紙、専門紙など86労組が結集し、組合員数は約1万5000人に上ります。編集だけでなく、販売、広告、営業、印刷、デジタル部門など、多様な職場で働く仲間がいます。新聞労連には個人加盟が可能な労組もあり、労組がなかったり、労組があっても新聞労連に加盟していない企業・団体で働く方なども加入しています。労働環境で悩みを抱える方はご相談ください。
新聞労連の役割は、第一に新聞労働者の待遇を向上させていくことです。新聞業界は2000年代以降、リーマンショックが起きたことをきっかけに長らく賃金抑制の傾向が続いてきました。しかし、近年は人員削減やデジタル化の推進などによって新聞労働者1人あたりの業務量がむしろ増える傾向にあります。加えて、出口の見えない物価高によって新聞労働者の暮らしは圧迫されており、事実上の賃下げが続いているといっても過言ではありません。新聞労連は春闘で賃上げ5%を統一目標に掲げており、近年、ベアを勝ち取る加盟労組も増えています。新聞業界でも少しずつ「日常の風景」になりつつあるベアの動きを、しっかりと定着させていく取り組みが求められています。
新聞業界は購読部数や広告収入の落ち込みによって経営の先行きが見通せず、各社とも現状を打開しようと躍起になっています。地方では人員削減のために取材網が縮小される傾向が強まっており、現場の業務量が人員数に見合わなくなったり、ニュースの空白地帯が生じたりする恐れもあります。また、新聞業界でも生成AIを業務に活用する動きが一気に活発になってきています。業務効率化によって現場の負担軽減につながるとの期待がある一方、既存業務の担い手が人からAIに取って代わられることで、労働者が職場を追われたり、過度な人員削減が進む懸念も拭えません。変革を急ぐあまり、現場の労働者にしわ寄せがいかないよう注視する必要もあります。
新聞業界では「夜討ち朝駆け」に象徴されるような長時間労働を美徳とする雰囲気が依然として残っており、ハラスメントもいまだに横行しています。経営陣や管理職の意思決定層は、企業戦士として仕事に打ち込んできた男性で占められており、業界全体に旧態依然とした考えがいまだに横たわっているように感じます。新聞労連は2019年から女性組合員による特別中央執行委員制度を始め、もともと男性が大半だった中央執行委員会は、全体の3分の1が女性となりました。業界内のジェンダー平等の実現を目指し、時代に合った「誰もが働きやすく、誰もが働きがいを実感できる職場」を求めていきます。
平和を守り、ジャーナリズムを育てていくことも大切です。戦時中、新聞が旧日本軍の戦果を誇張して報道し、国民の戦意をあおり、多大な犠牲を生んだ過去への反省に基づき、新聞労連は結成時から「戦争のためにペンを取らない、カメラを取らない、輪転機を回さない」との誓いを立ててきました。戦争のない世界を目指すのはもちろん、唯一の戦争被爆国として原爆の記憶を語り継ぎ、核兵器のない世界の実現を訴えていきます。また、近年は公権力が記者の取材を制限する事案も起きており、目を光らせていかなければなりません。新聞労連ジャーナリズム大賞で組合員の優秀な記事を表彰することで、ジャーナリズム育成も後押ししていきます。
現代ではSNSが暮らしの一部になり、真偽の入り混じった情報が氾濫しています。こういう時代だからこそ、新聞をはじめとするメディアの役割は一層重要性を増していると考えます。労働組合は、そういう使命を担った組合員の働く環境を守り、安心して報道に打ち込める環境をつくるための「砦」だと考えます。新聞労連は加盟労組の自主性を重んじながら、長年にわたって蓄積された知見やノウハウに基づき、加盟労組の実情に応じた助言を行い、活動をサポートしていきます。その先に新聞業界の明るい未来があると信じています。
新聞労連中央執行委員長 内藤景太(北海道新聞労組出身)