横浜市による度重なる「報道介入」に抗議する
神奈川新聞が紙面やデジタル版に掲載した横浜市政を巡る記事に対し、横浜市は昨年11月から12月にかけ、4度にわたって「抗議文」を発出した。文書では横浜市の見解についての回答を要求、神奈川新聞は1月10日の紙面に掲載した反論記事で「いずれも適切な取材で判明した事実に基づく記事であり、『報道の萎縮』を目的とした圧力と判断した」と強調し、回答を保留している。約377万人の人口を擁し、日本最大の政令指定都市である横浜市は巨大な公権力であり、監視される側にある。表現の自由、報道の自由を重んじなければならない立場にあることは明らかだ。抗議文に事実関係の誤りの指摘はなく、記事に市側の主張が含まれていないとして「公平性」を求める内容で、報道内容のコントロールや報道への圧力を狙ったものと言わざるを得ない。新聞労連として強く抗議し、再び同様の行為を繰り返さないよう求める。
抗議文は「横浜国際プールの再整備」「山下ふ頭の再開発」「市の新庁舎が閉鎖的だとして市民有志が執務室の施錠解除などを求めた」との、いずれも市民の関心が高いテーマの記事に関するものだ。市は記事の内容を「極めて一方的であると受け止めざるを得ず、読者に対して誤解を与えかねない」などと批判し「市民に誤解を与えない公平性を担保した記事掲載を求める」と差し替え記事の掲載まで要求している。市の言う公平性の詳細は明らかではないが、抗議文でそれぞれの課題に対する市の姿勢や取り組みを詳述しているところをみると、神奈川新聞が独自取材を基に書いた内容と市の言い分を並列するような差し替え記事を求めているとみられる。これは報道の自由を阻害する行為だと言うほかない。
一度は抗議文の存在を「知らない」とした山中竹春市長は1月22日の記者会見で「抗議文ではないという印象」とした上で、「疑義があった場合、あるいは市民に誤解を与えるような表現があった場合に質問することはあってもいい」との見解を示した。だが、抗議文の差出人として記載されている報道担当部長は文書の発出に当たり、神奈川新聞社を訪問して市の見解への回答を直接求めることまでしている。ただ質問するというのにとどまらない、威圧的な行動だ。
報道の自由を巡っては、ここ数年、石川県や山梨県、徳島市、兵庫県、奈良県香芝市、沖縄県南城市などで、首長や議長が取材活動を妨害したり、制限を加えたりする事態が相次ぎ、新聞労連や日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が抗議声明を出すなどしてきた。民主主義の基盤であるジャーナリズムを守り育てるため、新聞労連は公権力による不当な介入に対し今後も抗議の意志を示し続ける。
2025年2月17日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 西村誠