イラクへの自衛隊派遣計画中止を求める緊急アピール

イラクへの自衛隊派遣計画中止を求める緊急アピール

 イラク北部のティクリート付近で11月29日、復興支援にあたっていた日本人外交官2人が銃撃を受けて命を失った。イラクでは米軍の反米武装勢力掃討作戦が始まった11月以降、米英軍以外の非軍人の犠牲者が急増している。イラクの市民にいたってはすでに約1万人の犠牲者が出ていると言われ、ベトナム戦争以来の泥沼状態に入ったといっても過言ではない。これでもなお小泉政権は、米ブッシュ政権への「忠誠」を示すためにイラクに自衛隊を送ろうというのか。12月8日は日米開戦の日だ。1941年、62年前のきょう、日本はアジアから太平洋地域へと侵略戦争を拡大し、その反省から平和憲法がつくられた。

 日本の憲法は国際紛争での武力行使と交戦を禁じている。私たちは、平和憲法を踏みにじるイラクへの自衛隊派遣計画の即時中止を求める。

 「日本にいても同じだ」。自衛隊がテロの標的になる可能性を質問されたときの小泉首相の答えだ。これが一国の首相の言葉かとあきれるばかりだが、小泉首相はいまだにイラクになぜ自衛隊が行かなければならないのか、日本の市民への説明責任さえ果たしていない。比較的安全と見られていたイラク南部のナシリアでも11月12日、イタリア軍警察が自爆テロの犠牲になった。そして今度の外交官の襲撃事件。しかも、日本政府は、米英占領当局(CPA)の情報ばかりに頼っているお粗末さだ。

 現在の状況では、戦闘地域と非戦闘地域のしゅん別が不可能なのは言うまでもない。専門調査団の報告でもイラク南東部は「襲撃の恐れがある」と警告している。自衛隊の派遣候補地に検討される南部サマワは「治安が安定」とはいうものの、仮に派遣されれば、自衛隊そのものが「標的」になる恐れがある。
 
 米英の占領軍がイラクにいること自体が治安悪化の原因となっている。取り調べや拘束など、掃討作戦の名のもとに行われる米軍の暴力的な行為がイラク人の反感を買っているのは想像に難くない。イラクに必要なのは法による平和の枠組みだ。「復興支援が目的」というのなら、まずは国際機関による統治の枠組みに日本がどう協力できるかを早急に決めることだ。そのうえで非軍事的な人道支援の道を探るべきだ。
 
 改めて指摘する。米政府が日本に求める「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(イラクに陸上自衛隊を)は、「アジアの経済大国である日本も米国の支持者である」ことの国際的な表明を求めているに過ぎない。自衛隊の派遣がイラクに安定した統治をもたらす保証はない。私たちは強く自衛隊のイラク派遣に反対する。

2003年12月8日 
日本新聞労働組合連合(新聞労連)