第126回定期大会報告

大会宣言  連帯の力で平和と民主主義を守ろう

 戦争への反省をもとに、私たちは一歩ずつ着実に平和、表現・報道の自由、国民主権など民主主義の礎を築いてきました。かけがえのない多くの命を犠牲にした教訓は、次の世代に引き継がなければなりません。時の流れとともに戦争を直接体験した方々が次第に数少なくなる中、新聞、ジャーナリストが果たす役割はより重要になっています。しかし、戦後70年という節目を迎える今、政治の暴走によって民主主義が脅かされています。

 新聞はあえいでいます。インターネットやスマートフォンの浸透とともに、無読者層の拡大、新聞離れというかつて経験したことのない荒波が押し寄せているからです。労働条件や職場環境を維持し、雇用を守るには、これまで以上に苦難を伴うことが予想されます。このような内憂外患の難局に直面しているからこそ、新聞産業で働く者の連帯を強めなければなりません。

 また、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から4年4カ月がたちましたが、被災地では今なお、多くの人たちが復興の途上にあります。私たちは、被災した方々とともに歩み、「脱原発」社会の実現と復興に向けても行動しなければなりません。

 新聞労連は7月22、23日の両日、「平和のためにペンを 新聞の力今こそ結集」をメーンスローガンに掲げ、東京都台東区で第126回定期大会を開きました。新崎委員長は大会冒頭のあいさつで「メディアへの風当たりは強いが、組合としてしっかりまとまり、難局にぶつかっていかなければならない」と呼びかけました。

 安倍政権は、国民の大きな反対の声を無視し、昨年12月に特定秘密保護法を施行しました。特定秘密保護法は、取材を監視し、国民の知る権利を脅かす危険性をはらんでいます。現場に立つ記者のプレッシャーは高まっていますが、委縮させることのないよう、労働組合は盾になる覚悟が求められています。労連は今大会で、物言えぬ時代へと逆行することを許さぬよう、権力への監視の役割を果たしていくことを確認しました。また、自衛隊の海外活動拡大を可能にする安全保障関連法案(戦争法案)は7月15日に衆院特別委、16日に衆院本会議で強行採決されました。法案に対しては、各種世論調査で、反対が賛成を上回っています。衆院憲法審査会では自民党推薦で出席した学者や内閣法制局長官経験者も憲法違反であることを指摘しました。にもかかわらず、議席の数にものを言わせ、国民の多数意見に耳を貸そうともしない安倍政権の手法は、立憲主義を否定しているとしかいいようがありません。

 この議論のさなか、決して看過できない事態が起こりました。自民党の若手勉強会で、政権に批判的であるとして沖縄の2紙を攻撃し、威圧する発言が飛び出しました。講師として招かれた作家も2紙を「つぶさないといけない」と発言しました。一個人の発言は自由であり、新聞報道への批判や異なる主張については真摯に受け止めます。しかし、民主主義の根幹を支える報道の自由を敵視する独善的な発言であり、多くの国民の怒りや疑問が渦巻いています。

 労連は今大会で「平和のためにペンを、カメラを持とう、輪転機を回そう、そして平和をうたう新聞を届けよう」を合言葉に多くの市民と連帯し、関連法案を廃案するまで闘うこと、さらには言論弾圧に屈せず、権力を持つ国会議員や発信力の高い文化人の圧力発言を決して認めないことを特別決議しました。

 労連は現在4つの争議を支援しています。宮古毎日労組闘争では、第3次不当労働行為救済申し立てと法廷での闘争を行っています。契約社員の組合員2人に対するパワハラや不利益変更に対する損害賠償を求める裁判の傍聴席には、読者や市民の姿もあり、地域での連帯が広がっています。ブルームバーグの解雇撤回・復職闘争は、3度目の勝訴を勝ち取りましたが、会社側によるいやがらせ裁判が続いています。UPC(日本外国特派員協会労組)争議は雇い止めの無効確認や一方的にカットされた手当の支払いを求め、東京地裁に提訴したほか、都労委で団交拒否などをめぐり係争。山陽新聞労組は、夏季一時金での労使合意を履行せず、県労委のあっせんに応じようとしない経営側と闘っています。いずれも争議の過程で、経営サイドの不誠実、理不尽な姿勢が明らかになっています。今大会では、本部三役見解と、歴代三役有志の声明を踏まえ、内外タイムス争議支援を振り返り、私たちは改めて争議支援の意義を確認しました。「よってたかって勝たせる」精神を受け継ぎ、全力で支えていく方針です。

 労連を持続可能な組織とするため新たな改革に取り組んでいます。組合員からの会費で成り立っている財政は、経営側の長期的な人員削減に伴う組合員減少により「非常事態」というべき危機に直面しています。「チャレンジ100」プロジェクトによる組織拡大は一定の効果が出ていますが、このままいけば運転資金の枯渇が避けられません。2015年度から争議基金を活用し、「財政健全化特別会計」を新設します。争議基金は労働組合にとって命綱です。新たな活用については執行部内からも慎重な対応を求める意見が出ましたが、加盟単組にさらなる負担増を求められる状況ではなく、また労連活動を後退させないため、苦渋の判断をいたしました。争議支援は今後も縮小させることなく継続していかなければなりません。改革を検証しながら経費削減、節約の努力を最優先し、それでも一般会計が単年度赤字になった場合に支出します。

 改革という点では、1年をかけた議論を経て、副委員長の非専従化に伴う新たな役員ローテーションが承認されました。委員長ローテは現行の毎日・共同・道新・朝日に加え、労連委員長の選出実績がない中国、西日本両労組も受け入れに理解を示していただきました。委員長については6単組で2031年度まで、副委員長は東京・関東地連から1年交代を原則に選出、書記長は従来の日経、時事、河北に各地連を加え2028年度までとする案が確立されました。ローテは強制力を持つものではありませんが、労連の安定運営を長期的に支える鍵となります。

 委員長ローテの復帰判断を留保している朝日新聞労組は、同労組からの要請に応えた内外タイムス争議支援への三役見解を評価しつつも、今期での復帰を見送ることを報告しました。ただ、組織として労連からの脱退やローテの正式離脱を意図したものではなく、労連をよりよい組織にするための思いを受け止めてほしいとの説明がありました。

 また、今大会で、高橋副委員長と大江書記長の退任に伴い、山形新聞労組から奥田副委員長、新潟日報労組から塚田書記長が選任されました。労連は新たな体制でこれからの1年、活動を継続し、発展への道を模索していくことになります。

2015年7月23日  新聞労連第126回定期大会

新崎委員長(共同)を再選

書記長に塚田さん(新潟日報労組)、副委員長に奥田さん(山形新聞労組)を選出

新聞労連は7月22、23の両日、東京都内で第126回定期大会を開催した。「平和のためにペンを、新聞の力今こそ結集」をメーンスローガンに掲げ、新聞作業を守り、平和と民主主義の危機に立ち向かう新年度方針を決めた。

 役員人事では、高橋直人・中央副執行委員長(岩手)と大江史浩・書記長(西日本)が退任し、新たに中央副執行委員長に奥田孝吉さん(山形新聞)、書記長に塚田朋弘さん(新潟日報)が選出された。中央執行委員長は新崎盛吾氏(共同)が再任された。

 定期大会に先立つ21日の第5回拡大中央執行委員会では、大会議題や運営などを確認した。秘密保護法や「戦争法案」についても議論を深め、来期の重要課題にすることを決めた。