共謀罪と同質のテロ等準備罪成立に抗議し、廃止を求める声明

2017年6月15日
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 小林基秀

 政府が今国会に提出した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が成立した。新聞労連はこれまで、過去3度にわたり廃案となった「共謀罪」と骨格が同じである点を問題視し、捜査機関によって人々の生活が広範囲に監視され、表現や思想の自由を侵害される恐れや、それに伴って、もの言えぬ社会が到来する危険性を指摘してきた。こうした懸念に対して政府与党は誠実に向き合わず、しかも参院法務委員会での審議を打ち切って本会議で直接採決する「中間報告」を強行した。議会制民主主義を自己否定するような乱暴なやり方であり、政府与党に強く抗議する。

 国会審議で浮き彫りとなったのは、捜査機関の判断次第で対象がいくらでも広がる法律の問題点だ。テロ等準備罪の適用対象となる「組織的犯罪集団」かどうかを判断するのは警察や検察であり、その判断の適切性がどう担保されるのかは依然不明確だ。構成要件とされる「準備行為」についても、何を根拠とするのか曖昧で、当局の解釈にゆだねられている。計画を合意したとみなす材料をどのようにして入手するのかも明らかになっていない。問題点が多く残る中、政府の「一般市民は対象にならない」という説明は破綻している。私たち市民の電話の盗聴や電子メールの収集などが広範囲に行われる恐れは拭いきれない。

 国連人権理事会でプライバシーの権利を担当する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が5月、安倍晋三首相に送った書簡で、この法案は「プライバシーや表現の自由を過度に制約する恐れ」「テロや組織犯罪と関係ない犯罪にも適用される恐れ」を指摘したのに、政府は真正面から受け止めることなくケナタッチ氏への非難に終始した対応も問題が大きい。

 テロ等準備罪法が成立した今、私たちは捜査機関が同法をどう運用していくのか、裁判所はチェック機能を果たしているのかを丹念に調べ、追及し、市民の知る権利に応えていく。また、同法が抱える問題点を引き続き伝え、廃止を粘り強く訴えていく。萎縮せず、自由で開かれた社会の実現に向けて市民や読者とともに歩んでいく。

以上