MIC声明:ハラスメント報道を妨げる高裁判決を許さない ~ジャパンビジネスラボ「マタハラ」事件~

 昨年 11 月、東京高等裁判所第8民事部(阿部潤裁判長)が、育児休業明けに契約
社員にされた原告女性の正社員復帰を認めず、雇止めとしたジャパンビジネスラボ
の不当な取り扱いをそのまま追認する判決を言い渡した。その理由として高裁判決
は、原告女性がハラスメントの証拠として会社で録音した会話をメディアなど外部
の関係者に提供したことなどを指摘して、会社との信頼関係を破壊する行為を繰り
返したとして雇用継続を期待できない十分な理由があると認定している。

 これは、憲法が保障する取材・報道の自由によって仕事を成り立たせている私たち
メディア労働者として、看過できない重大な問題だ。確かな証拠に基づく正確な報道
を心がける私たちにとって、現場での録音・録画は貴重な情報源であり、裁判におけ
る証拠としても極めて重要な位置づけを持つものである。企業に対して立場の弱い
労働者が身を守る数少ない手段として、ハラスメントの現場などにおける録音がそ
の存在などの立証に活用されている現状を鑑みれば、高裁判決は、ただでさえ泣き寝
入りをしがちな労働者の権利行使をさらに困難にし、メディアが体現する「市民・国
民の知る権利」の保障にとっても大きな障害となるだろう。

 さらに高裁判決は、原告女性が一審提訴時に記者会見で述べた内容について、会社
に対する名誉棄損だと認め、司法が自ら雇止めを有効と判断し、労働契約そのものを
断ち切られた一個人に高額の損害賠償まで命じている。こうした判断がまかり通れ
ば、提訴時に記者会見で自己の主張を訴えようとする労働者はいなくなり、労働問題
の報道に著しい障害をもたらしかねない。取材・報道の自由、そして市民・国民の知
る権利を大きく後退させるおそれがある。

 出産・育児における労働者の保護、職場におけるハラスメントの防止という重要な
社会的問題に対して、およそ時代錯誤としか考えられない、このような由々しき司法
判断を許すわけにはいかない。

 報道・ジャーナリズムの観点からも到底容認できない不当な高裁判決は、最高裁に
おいて直ちに破棄・差し戻しとされるべきである。

2020 年 2 月 17 日
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)

▼ジャパンビジネスラボ「マタハラ」事件の概要は以下のPDFをご参照ください。