第144回 新聞労連定期大会 大会宣言
新聞労連は、7月18、19の両日、「ともに歩む、未来への道」をスローガンに第144回 定期大会を開きました。
新聞業界は今、人手不足が深刻化しています。離職を食い止め、若い人に選ばれる産業として生き残るには、暮らしと人権を守り、誰もが働きがいを感じられる環境づくりが必須です。長時間労働やハラスメントの横行を許さず、持続可能な働き方ができるよう変革を進めていきます。
物価高が続く中にあって、今春闘ではベアを獲得する単組が目立ち、夏季一時金闘争では過去最悪の水準から回復傾向がみられました。しかし、賃金改善に消極的な社は依然として多く、安易な人件費カットに走る経営者は後を絶ちません。民主主義の土台をつくる報道機関としての責務を果たすため、労連は「人への投資」が欠かせないことを強く訴えていきます。
一般社団法人徳島新聞社(社団)は編集系職場を分社化させ、賃金水準を75%に抑えた新会社に約90人を出向させる人事を強行しました。2025年卒以降の新卒者はすべて新社などで採用するという、業界でも前例のない「丸ごと分社化」です。労連は「次世代搾取にNO!」を掲げて組合を支援し、決行したストライキは大きなニュースとなって共感の輪を広げました。今後も新社の賃金を社団と同水準とするよう求めるなど、分社化の撤回要求を続けていきます。
労連が役員の女性枠として設けた「特別中央執行委員」は5期目となり、働き方への意識を問うアンケートを行いました。世代間のギャップが浮き彫りとなり、業界の古い体質を変える必要性を改めて認識しました。また、特別中執を中心に発刊した「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(小学館)を教材として学習会などを開き、無意識に使われている男性の「特権」や性別による差別、多様性の大切さについて課題を共有しました。
労連は引き続き、共に奮闘する仲間たちと連帯します。この1年間、労連が支援してきた争議のうち2件が解決しました。在日コリアンへのヘイトスピーチや差別を批判した記事を巡り、神奈川新聞記者が訴えられたスラップ訴訟は、東京高裁で記者勝利の逆転判決が確定しました。もう一つは、埼玉新聞社が19年に残業代の未払いを90%減額して従業員に支払うという個別合意を強行する中、労組委員長が同意せずに未払い残業代を求めた裁判です。地裁判決は「役職手当が残業手当の代わりだ」とする会社側の主張を否定し、未払い賃金約90万円の支払いを認めました。その後会社は控訴しましたが、和解協議で一審判決を受け入れ、原告の全面勝利となりました。錬成費の一方的打ち切りの不当性を訴える東京新聞労組、組合活動を巡る組織的ハラスメントの解決を目指す新聞協会労組の労働委員会での闘争も引き続き、支援していきます。
新聞労働者は、市民の知る権利に応える存在です。これまでも、これからも報道の萎縮につながる事態には抗議を続けます。
鹿児島県警は組織内部で起きた情報漏洩事件に関連し、福岡県を拠点とするウェブニュースサイト「ハンター」を家宅捜索しました。兵庫県当局は知事を批判する文書を関係機関に配布したとして幹部職員を処分した問題に絡み、神戸新聞記者に対して文書を受け取ったかどうか聴取を実施しました。行政が「情報源の秘匿」という記者の職業倫理を尊重せず、抑制的な態度をかなぐり捨てたふるまいは看過できません。また、首長らが不都合な質問をする一部メディアを取材の場から排除したり、記者を名指しで罵倒する事例が相次いでいることを懸念します。
労連は定期大会で特別決議として「言論の自由を守り、広げる」を採択しました。鹿児島県警の家宅捜索問題では、労連の抗議声明以降、十数社が強制捜査を批判する社説を掲載しました。労組の対応が紙面に影響を与えた一例です。言論の自由を無視した権力の横暴には、抗議の声を上げ続けることを誓います。
来年で戦後80年になります。石川昌義委員長はあいさつで、「知りたいことを伝えきれない、窒息した社会は戦争前を彷彿させる。私たちは二度と戦争のためにペンを取らない、カメラを持たない、輪転機を回さない。平和な社会をつくるために、私たちの力も問われている」と述べ、ジャーナリズムの責務を改めて強調しました。
取材する力、権力を監視する力を一層磨いていかなければなりません。そのためにも、一致団結して労働環境の改善を進めていきましょう。そして、将来を担う人材を確保し、育成していきましょう。取り巻く環境は厳しくとも、新聞に課せられた役割は大きくなっています。「ともに歩む、未来への道」。スローガンに掲げた通り、新聞労働者の連帯をここに確認します。
2024年7月19日
新聞労連第144回定期大会