盗聴法の衆院通過に抗議し、参院での廃案を求める

 国会は、重要な法案について審議を尽くす努力も、国民の声に耳を傾ける謙虚さも失ったのか。各方面から反対の意見がわき起こっている中で、6月1日、盗聴法を含む組織犯罪対策3法案が衆院本会議で可決された。「不正常」な委員会審議が批判を浴びたにもかかわらず、本会議でも採決を強行し、強引に法案の成立を進めようとするやり方は、議会制民主主義のルールを逸脱した暴挙にほかならない。新聞労連は改めて、今法案に対する国会審議の進め方に抗議し、報道の自由などを脅かす危険な法案の廃案を求める。

 すでに言われている通り、盗聴捜査を合法化する盗聴法は、捜査の対象が無限に拡大してプライバシーの侵害につながるだけでなく、報道に携わる人間の「取材源の秘匿」を危うくさせ、ひいては、捜査当局による言論・報道への介入や不当な圧力を招くことが危惧されている。このような法案に対して、多くの識者や弁護士、ジャーナリスト、市民グループ、労働組合などが反対を表明し、さまざまな疑問点が指摘されているにもかかわらず、自民、自由、公明の3党が強引に今国会での法案成立を目指していることには、強い怒りを禁じ得ない。

 反対する委員が不在のまま、「沈黙」の質問時間を過ごして審議の体裁を整え、強行採決へと突き進んだ衆院法務委員会のやり方は、明らかに、国会審議の歴史に汚点を残すものであり、そのような「異常」な委員会審議を黙認して法案採決に走った衆院本会議もまた、批判を免れない。

 新聞労連は、衆院本会議が十分な審議もないまま、3法案を可決したことに抗議する。良識ある人々の指摘に耳を貸さず、盗聴法をやみくもに成立させようとする動きに抗議する。そして、数を力に反対意見を押しつぶしていくような議会運営に、強く抗議する。

 新聞労連は、公明党などに今法案に賛成する姿勢を転換するよう申し入れたほか、日本新聞協会に対しても、言論・報道の自由を守るため、盗聴法阻止の共同歩調をとるよう要請した。新聞労連は、今後も引き続き、法案の廃案を求めて運動していく。同時に、報道に関わるすべての人間が、そして、多くの市民が再度、盗聴法に反対する声をあげていくよう訴える。

 後世に禍根を残さないためにも、参院は衆院の愚を繰り返さず、十分な審議を尽くし、その上で、さまざまな懸念が解消されないままであるなら、法案を廃案にすることを要望する。

1999年6月1日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
執行委員長  服部 孝司