業界団体および加盟社の女性登用についての要請

日本新聞協会 会長 山口寿一 様
日本書籍出版協会 理事長 小野寺優 様
日本雑誌協会 理事長 堀内丸惠 様

2021年2月3日
日本新聞労働組合連合会
日本民間放送労働組合連合
日本出版労働組合連合会
メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)

 貴団体の日ごろの活動に敬意を表します。

 さて、「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した2015年の国連サミットでは「持続可能な社会を作るには、ジェンダーの視点を計画的に主流化していくことが不可欠だ」という宣言がなされました。これに基づき、世界各国のあらゆる分野で女性の積極的登用が進んでいます。日本国内でも、多くの企業や業界団体で事態の改善が進んでいます。

しかし日本のメディアの業界団体では、役員における女性の割合がゼロや僅少な状態が続いています。

 私たちはこの現状に強い危機感を抱いています。メディア業界には「各媒体で女性の数は増えている」「差別はなく実力があれば女性でも管理職になれるので対策は必要ない」という声が根強くありますが、このままでは改善を遅らせるだけでなく、読者・視聴者からの批判や政府からの介入を招きかねません。メディアにとって死活問題であり、自主、自立のためにも、各団体が自主的に是正策に取り組むよう強く求めます。

 日本民間放送連盟(民放連)、日本新聞協会(新聞協会)、日本書籍出版協会(書協)、日本雑誌協会(雑協)=以下「各業界団体」とする=の女性役員人数は、民放連45名中0人、新聞協会53人中0人、書協40人中1人、雑協21人中1人です。

 日本政府も2003年にまとめた男女参画基本計画で、2020年までに「社会のあらゆる分野において指導的地位女性を少なくとも3割程度」にするという目標を示しています。この「指導的地位」には、「法人・団体等における課長職以上の者」が含まれます。しかし、社会全体としていまも3割目標に到達せず、メディア業界についても極めて残念な実態が続いています。

 第五次男女共同参画基本計画策定にあたっての考え方によると、上場企業の女性役員は2017年度から2020年度までに2.2倍になっているものの、社外役員が多いことが特徴で、その実情は社内からの登用ではありません。

 私たちは、各業界団体の共通課題として、女性活躍を推進し、業界団体および加盟社での女性登用の目標・計画・進捗を公表することを求めます。

 以下にメディア業界の現状と具体的な要請を示します。

【現状】
①コンテンツ制作の意思決定者の女性登用が不十分
 多様で魅力的なコンテンツ制作のためには、現場の多様性が欠かせません。読者・視聴者の半数は女性です。しかし、昨年度の労組の調査では、在京テレビ局の番組制作部門のトップに女性はゼロ(民放労)、新聞38社の会社法上の役員数は全体319人中、10人という結果です。多様性を欠いたコンテンツ制作現場や労働環境では、視聴者や読者が離れ、やる気のある人材も集まりません。メディアの意思決定層に女性が少ないことが、メディアから情報を受け取る国民の「無意識の思い込み」につながっています。イノベーションには多様な人材が知恵を出し合うことが必要です。

②意思決定者に女性が少ない
 各業界団体は、各媒体の倫理水準の向上と業界共通の問題を扱っています。その責任者には、多様なバックグラウンドをもつ人材を登用し、偏りのない意思決定ができるようにするべきです。しかし現状では偏りのない意思決定は極めて困難といえます。例えば、男性のみで意思決定を行う団体でセクシュアル・ハラスメント問題を適切に議論することは極めて困難で、適正だとは思えません。

【要請】
①業界団体の女性役員比率について、数値目標や加盟各社からの女性管理職による特別枠を設け、すみやかに3割以上にすること。その際、国連や国際NGOの指標、日本 政府の目標などを考慮し、最も高いレベルで実現を図ること
②ジェンダー・女性活躍推進に関する常設委員会を設置し、業界でのジェンダー平等を重要課題の一つにすること
③2021年4月までに業界団体と全加盟社が、役員の3割を女性にする目標計画・進捗を国の女性活躍推進企業データベース(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/ )で継続的に公開すること 

以上