「分社化(基幹業務総入れ替え化)」で次世代にツケを回す徳島新聞の機構改革計画の撤回を求める特別決議
2024年1月24日
新聞労連第143回臨時大会
一般社団法人徳島新聞社(以下社団)は2023年11月17日、全徳島新聞労働組合(以下組合)と事前協議会を持ち、出席した組合員に対し、「株式会社徳島新聞社」(以下KK新社)を設立し、編集部門の業務を「分社化」する機構改革計画を示した。社団の編集系職員全員を、24年4月にKK新社に出向させ、今後は社団での採用を中止する。今後、KK新社は社団の6割5分の賃金で採用するという人件費減らしが目的の悪質な計画だ。社団はこれまでも印刷や紙面整理、広告営業の一部などの部門を相次いで分社化している。そして今回の「分社化」提案は、新聞社の基幹である編集部門を丸ごとKK新社に事業継承する性格のもので、社団の大幅な空洞化を意味する。その意図するところは、組合と社団の間で長い年月にわたって交渉を繰り返し合意形成してきた賃金体系をはじめとする労働条件を、労使合意なしに反故にするものであり、容認できない。
組合は、編集部門を丸ごと「分社化」する提案を問題視し、11月20日付組合ニュースで事前協議会の内容を詳しく報じて組合員に周知した。さらに、12月11日、中央委員会を開催し満場一致で「分社化阻止」の方針を議決した。同22日、会社に分社化の白紙撤回を求めて団体交渉を申し入れ、労使で交渉の場を持つことを確認した。組合はこの問題についてのスト権も確立している。新聞労連は、断固として反対する方針を打ち出した当該組合の方針を支持する。
社団の経営陣は「分社化」という言葉を使っているが、今回の提案は、各社で今まで繰り返されてきた、社業の一部のアウトソースに留まる分社化とは全く構造と意図を異にする。
昔から労働組合が結成されるとそれを嫌悪し、偽装倒産すると同時に新会社を設立して、労働組合に入らないと約束した者だけを新会社に雇用する「黄犬(おうけん)契約」という手法を取る悪質な経営者が後を絶たない。徳島新聞の機構改革計画はそうした労組法の趣旨に反する行為と何ら変わりない。権力を監視し、犯罪行為を防止する役割を担う新聞産業の経営者がするべき行為ではない。
社団の経営陣は「このままでは財務状況はすぐに赤字化し、一度赤字化すると黒字には戻れない」と主張し、人件費削減の必要を強弁する。組合の分析では、徳島新聞は業界内でも優秀な利益を確保できており、KK新社への脱法的な事業継承までしなければならない緊急性は認められない。
仮に経営に不安要素があるとしても、それは経営者の責任だ。その責任が、経営判断に参画できない私たち労働者に人件費削減という形で押し付けられて良いはずはない。ましてや、これから私たちと机を並べ、ともに地域のジャーナリズムに資する仕事をしようという前途に燃えて入社してくる未来の新入社員に押し付けられることを黙認するわけにはいかない。実際に、単純に人件費削減で組織の延命化を図るだけで将来の経営ビジョンを示すことができない経営陣に対し、職場では若手を中心に大きな失望が広がっている。
私たちは、経営責任をあからさまに次世代に押し付けようとする今回の社団の暴挙を断じて許さない。安直に人件費を削減し企業の延命を図るだけの施策が、いかに現場に、とりわけ次世代の新聞産業を担う若手を失望させ、地域報道の使命を担うモチベーションを低下させているか。このような提案が日本のジャーナリズムを崩壊させかねない暴挙であることを経営者は知るべきだ。全国の新聞労働者が、ここに声を一にし、今回の社団の「分社化」提案に強く抗議するとともに、直ちに提案を白紙撤回することを要求する。
以上