【調査報告】新聞業界の性被害・セクハラアンケート結果(2025年実施)

 新聞労連は2025年7~8月、新聞業界で働く人たちを対象にした性被害・セクシュアルハラスメントアンケートを実施した。元タレント中居正広氏の性暴力に端を発するフジテレビ問題などメディア業界で相次ぐセクハラ問題を受け、女性組合員でつくる労連特別中央執行委員を中心に発案。女性130人、男性237人、性別無回答5人の計372人から回答を得た(1人は一部無回答)。女性の半数以上が、その場で被害が認識できなかったものの、後から「ハラスメントだったかもしれない」と感じた経験があると回答。本人が気付かないうちに被害にあっている現状が浮き彫りになり、「業界全体での意識改革」が急務と言える。

 アンケートは、被害実態を掘り起こすことでセクハラ問題を再認識してもらい、安全で健全な職場環境づくりを目指そうと企画した。質問項目は、セクハラに関する認識▽社外・社内からの被害▽被害後の対応―などに関するものと、自由記述で構成した。当初は女性向けを想定していたが、実際には男性からの回答の方が多かった。年代別では40~50代の回答が6割を占め、全体のおよそ半数が40~50代の男性からだった。

セクハラに関する認識 ~女性6割、その場では被害と認識できず~

 セクハラに関する認識を問う2-1(複数回答)では、提示したセクハラ10事例のうち「一方的にLINE等でメッセージを送る」(61.9%)以外の9項目で8割以上の回答者が該当すると答えた。セクハラを巡る事例への認識は高いことがうかがえる。 

 その場ではハラスメントと認識できなかった経験のある人は女性が57.7%(75人)、男性が33.8%(80人)、全体では42.2%(157人)だった(問2-2)。あると答えた人のうち、120人が後にハラスメントだった可能性に気付いたきっかけを自由記述で回答した(問2-3)。ハラスメントに関する報道がきっかけになったという声が目立ち、自身で後に気付いた、同僚や友人、家族といった周囲の人からの指摘によるといった回答も多かった。 女性からは「後輩の経験を見聞きして、自身に起きたことも同じだったと気付いた」「当時から許されないと思っていたが、ハラスメントという言葉と結びつかなかった」といった気付きが寄せられた。男性からは「ハラスメントへの理解が進み、過去の自身の発言が該当していると気付いた」「(過去の言動について)いま振り返って反省することもある」とする記述もあった。

■社外の人からの性加害・セクハラ被害経験について ~女性記者営業が7割超の被害経験~

 社外の人からの性加害やセクハラに関する被害経験を尋ねた項目(問3-1)では、26.6%(372人中99人、1人無回答)が「ある」と回答した。このうち83人が女性で、記者職では76.1%、営業職では82.6%と、非常に高い水準で被害の経験があることが分かった。

 「どのような相手からか」(問3-2、複数回答)の項目では、「新聞・通信社の同業」の回答が35.4%と最多だった。続いて、「警察関係者」(30.3%)▽「国会議員・地方議員本人」(19.2%)▽「取材相手の企業幹部や広報担当者」「営業先・広告主の担当者」(各18.2%)―の順に多かった。また、「政治家秘書や事務所・後援会関係者」(14.1%)、「省庁や自治体職員」(13.1%)、「スポーツチームの監督やコーチ」(10.1%)と続いた。地域の有力者、学校関係者など、日ごろの取材や営業活動で接点のある幅広い相手先に、取材情報などで優位な立場を利用され、被害を受けたとみられる構図がうかがえる。

 「被害を受けた場所・状況」(問3-3、複数回答)では「飲食の席(取材・営業に伴うもの)」が69.4%と突出して多く、「取材中・営業活動中(相手の執務室・事務所など)」(38.8%)、「電話・メール・SNSなど(オンライン含む)」(24.5%)―と続いた。被害を受けた回数(問3-5)は「数回程度」が50.5%で最多。「一人で対応していたか」(問3-6)は「一人」が85.7%と突出していた。

 受けた行為(問3-4)は「不必要な身体への接触(肩を組む、腰に手を回す、体を触るなど)」が60.8%。「性的な冗談、からかい、質問」(50.5%)、「職務に関係のない、容姿や身体的特徴に関する性的な発言」(45.4%)、「食事やデート、私的な交際への執拗な誘い」(42.3%)が多かった。「不同意性交等罪に該当するような行為」との回答も7件あった。

 社外の人との飲食の席(取材や営業に伴うもの)での被害経験(問3-7)に関する自由回答では、「体を触られた」「下着の中に手を入れられた」「無理やりキス」「性的関係の強要」など深刻な回答が散見された。「数え切れない」「あまりにひどくて再現したくない」など、心理的負担の大きさを感じさせる回答も少なくなかった。

 業務に関して、意に反して社外の人との飲食の場に同席を要求されたり、接待的な役割を求められたりした経験(問3-8)に関する自由回答では、「担当でもないのに呼ばれ、席次に関係なく議員の隣に座り、話し相手になった」「『かわいい子についでもらった方がお酒がおいしい』などと言われながらお酌を強要された」などの経験が寄せられ、だまし討ちの形で二人きりになったケースも報告された。服薬中にもかかわらず飲酒を強要される、出席を断って先輩から叱責を受ける―といったハラスメント事例もあった。一方、お酌や宴席への同席については、「強要」「断れなかった」から「進んでやりたくはなかった」、「『女性だから』という理由でお酌などを求められたことはなく、嫌な思いはそれほどしていない」まで、受け止めには濃淡があった。

■社内の人からの性加害・セクハラ被害経験について ~「組織で生きるには我慢」同調圧力が温床に~

 社内での性加害やセクハラに関する被害経験をたずねた項目(問4-1)では、回答者全体では25.5%(95人)が「ある」と回答した。そのうち72人が女性、女性記者は約半数(50.7%)が、そして、女性営業は65.2%もの人が社内でのハラスメントを経験していたと回答した。男性も男性全体の約1割の人が被害経験があると回答した。

 被害者の中で「性加害やセクハラを誰から受けたか」(問4-2、複数回答)には72.6%が「先輩・同僚」と答え、「直属の上司」(38.9%)▽「直属ではない上司・役員」(28.4%)―と続いた。また、約7割が「社内の飲み会など」で被害に遭ったとし、被害の回数を「数回程度」とした人が約半数に上った。自由記述では「業務という口実で社外での待ち合わせや飲食の強要」▽「職場の飲み会で『このあとホテルに行こう』と言われた」などの事例が報告された。男性からも「社内の女性を誘うようにからかわれたり、性風俗店に行くことを推奨された」―などがあった。

 「社内の飲み会などで、意に反して同席を求められるなど不快な思いをした経験があるか」と尋ねた項目(問4-6)では、48.4%が「ある」と答えた。「『女性』ということでの飲み会出席や、お酌を強要されることは若手時代は当たり前だった」(40代女性)のほか、忘年会での一発芸やチークダンス、デュエットなどを要求されるケースが多数報告された。男性からの回答にも一発芸として服を脱ぐことを強要された事例があり、社内における上下関係で発生するハラスメントの実態が浮かぶ。

 いずれの自由記述でも「(当時は)どうして良いか分からず誰にも言えなかった」「男性社会の職場でやっていくには我慢しないといけないとまひしていた」―など、被害を申告できなかった当時の心情を振り返る声も多かった。

■被害経験後の対応について ~相談しなかったが最多、解決期待できず~

 「ハラスメントと感じる行為を受けた後、相談したか」(問5-1)には144件の回答があり、「相談しなかった」が59.0%を占めた。「同僚・先輩・後輩」(25.7%)、「上司(被害を与えた当事者以外)」(15.3%)も一定数あった。相談しなかった主な理由(問5-2)は89件のうち「相談しても無駄だと思った」(48.3%)、「相手との関係が悪化することを恐れた」(30.3%)、「相談することで不利益な扱いを受けるかもしれないと思った」(27%)などと相談することに期待を持てないとの回答が多くみられた。

 相談した結果、状況はどのように変わりましたか。あるいは変わりませんでしたか(問5-3)は自由記述で44件の回答が寄せられ、約半数が「何も変わらなかった」と答えた。「先輩に話したが笑って受け流された」など、報告・相談しただけの形になり、実際に解決のために動いてくれなかった事例が目立った。反対に、会社や相談相手が、加害者(社内や取材先)にきちんと指導・抗議してくれたり、直接接触しないようにしてくれたりといったケースもあった。また、中には「業務の一環と思いそっとしてもらった」との記述があった。相談には一人で対応する必要があったか(問5-4)には62件の回答があった。「ほとんど一人で対応した」が58.1%に上り、1人での解決を迫られた実態が浮き彫りになった。

■自由記述 ~「50代以上の意識低い」同僚男性も指弾~

 自由記述では、主に女性の回答者から、容姿や身体的特徴への性的発言やからかい▽宴席でのお酌やチークダンス、デュエットの強要▽執拗な食事・交際の誘い▽出産や産休に関するマタハラ-などが挙げられた。記者や営業、販売職を含む、幅広い世代から被害事例が挙がっており、10~20代の若手社員の具体的な被害申告も少なくなかった。発生場所は社内の執務室や宴席、社外の取材先や宿泊先など多岐にわたり、キスや胸・尻など体への接触、密室で二人きりにさせられるなどの深刻な性暴力につながる事案もあった。 

 加害者については、記者職では若手が担当することの多い警察官や高校野球の関係者、地元住民のほか、営業職では取引先の経営者ら、さらに社内の上司や先輩、同僚というケースがあった。

 被害を相談できたかどうかについては「取材・取引先との関係悪化を懸念した」などの理由でできなかった人が多く、「職場に自分以外に女性記者はおらず、誰にも相談できなかった」(10~20代女性)との体験も寄せられた。相談した場合も「加害者に処分がなされなかった」「相談は秘密と言いながらも社内で誤った情報が出回る」などの回答もあった。

 一方、男性からは具体的な被害経験は少なかったが、女性の同僚や部下からセクハラについて相談を受けたり被害を目撃したりして、問題意識を持っている人もみられた。特に「50代以上の男性の意識の低さ」を指摘する声が同性から複数上がっていた。

 職場文化として「男性中心・年功序列・閉鎖的体質」「若手女性への性的期待」「ハラスメント加害者が昇進する事例」などが指摘され、管理職の認識不足や研修の形骸化も課題とされた。「『自分は記者だ』というプライドやおごりが人権意識のアップデートを妨げている」(10~20代女性)、「特に販売局の男性社員は女性を下に見る傾向がある」(30代女性)などの具体的意見もあった。

 改善策としては「社外独立窓口の設置」「管理職教育の強化」「若手記者への事前研修」「ハラスメント定義の明確化と厳罰化」「業界全体での意識改革」などが求められている。


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