産経新聞・前ソウル支局長の起訴に抗議する

2014年10月9日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 新崎 盛吾

  産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長が執筆した朴槿恵大統領の動静をめぐる記事について、韓国の検察当局が加藤前支局長を在宅起訴したことに、新聞労連は取材と報道の自由を著しく侵害する行為だとして強く抗議し撤回を求める。

 産経新聞は、旅客船セウォル号が沈没した日に朴大統領が男性と会っていたとのうわさがあるとの内容の記事を、8月3日付でウェブサイトに掲載。市民団体から告発を受けた検察は8日、虚偽の事実を記事にして朴大統領と男性の名誉を棄損したとして、情報通信網法違反罪で在宅起訴した。出国禁止処分も8月から続いており、加藤前支局長は2か月以上出国できない状況に追い込まれている。

 そもそも大事故が起きた時の国のリーダーの行動は、報道機関が当然取材すべき国民の関心事であり、憲法で表現の自由が保障されている日本で刑事事件になることは考えづらい。政府に批判的な報道を処罰するような国が、民主主義国家だと胸を張って言えるのだろうか。韓国に独自の法体系があり、思想や表現の自由に一定の制約があるとしても、今回の在宅起訴はジャーナリズムの国際基準からみて、極めて特異なケースだ。

 産経新聞労組は1961年に新聞労連を脱退しているが、新聞労連としては韓国で取材活動を行う全ての報道機関の取材活動に大きな影響を与える問題だと認識している。韓国の検察当局は、一刻も早く加藤前支局長の在宅起訴を撤回して行動の制限を解き、民主主義国家として取材と報道の自由を保障するよう強く求める。

以上