新潟県議による「記者への暴力」に断固抗議する
新潟県の重川隆広県議が10月、県議会庁舎で取材中だった新潟日報の記者に対して首を絞め、けがを負わせる暴行に及んだ。11月6日付朝刊の新潟日報の報道によると、記者は「頸部挫傷で約10日間の加療」との診断を受けた。仮に取材に対して不満があったとしても、当選3回のベテラン県議が、報道活動に対して暴力で応じたのは極めて卑劣な行為だ。重川県議の行為が報道の自由、市民の知る権利の深刻な侵害であることは論を待たないが、そもそも犯罪性の高い行為である。最も強い言葉で抗議する。被害記者への謝罪に加え、二度と同様の事態を起こさないように求める。
新潟日報などの報道によると、10月9日、県議会庁舎の会議室から出てきた重川県議が、ドアの前にいた記者に対し「何をしているんだ」と大声を出しながら首を絞めた。いったん手を離したが再び首を絞めたという。記者は既に新潟警察署に被害届を提出し受理されている。詳細な事実関係は捜査の進展を待つしかないが、新潟日報の取材に重川県議の代理人は「違法な暴行があったという認識はない」「通路を確保するために体に触ったが、首は絞めていない」と答え、共同通信の取材に重川氏は「通路の妨害に対処するために体を押したが、首は絞めていない」とした上で、新潟日報の記事に「内容には多くの誤りがある」と反論している。
ただ、記者は首にけがを負っているのに首を絞めていないとはどういうことか、強い疑念を持たざるを得ない。重川氏は自身が主張する「新潟日報記事の誤り」の詳細や、暴行に及んだ理由などを真摯に説明する責任を負っている。
ここ数年、全国で記者に対する攻撃が相次いでいる。広島県安芸高田市の前市長や兵庫県知事のケースなど、首長や政治家がいわば「犬笛」の役割を果たし、インターネット上で記者の名前や顔写真がさらされ誹謗中傷を受ける事案が後を絶たない。これらも当然暴力の範疇に入るが、重川県議は物理的な暴力に及んだ点で、露骨で悪質な行為だ。
権力監視を使命とする報道に携わる以上、記者は権力を持つ公人に対して厳しい態度で取材に臨む。そのため、記者が時に、公人にとって気に障る存在になることは避けられない。ただ、公人はその立場を生かして報道に対して広く反対の意見や抗議の意を公表することができる。にもかかわらず、言葉ではなく暴力を用いた重川県議の行為の背景には、報道という営みに対する無理解や著しい軽視が根底にあるのではないかと疑問を覚える。県民を代表する県議であるからこそ、自らの重大な行いに対して襟を正すべきだ。
新潟日報社は編集局長名で「憲法で保障された報道の自由を脅かす行為で到底認めることはできない。仮に取材に抗議するにしても、言葉で表すべきで暴力に及ぶのは決して許されない」との談話を公表している。新聞労連と1万6千人の仲間は、新潟日報社の憤りに連帯し、民主主義の基盤たる報道活動を守る取り組みを今後も続けていくことを誓う。
2025年11月12日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)中央執行委員長
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)議長 西村 誠
新聞労連北信越地方連合会委員長 奥村 欣史
新聞労連新潟日報労働組合執行委員長 江森 謙太郎
