「自衛隊拠点周辺での取材妨害に抗議する」
2022年11月22日
日本新聞労働組合連合 (新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義
琉球新報の写真記者が沖縄県八重瀬町の陸上自衛隊南与座分屯地周辺で訓練の取材中、自衛隊員に撮影を制止され、撮影データの削除を求められた、と11月12日付の琉球新報が報じました。この問題は、沖縄タイムスも同19日付で報道しています。両社の取材に対して、陸上自衛隊第15旅団(那覇市)は、外部からの撮影を禁じていない旨を回答しました。自衛隊や米軍の拠点を取材者の視点で監視する報道は、軍事力の暴走に歯止めを掛け、市民の安全な暮らしを守るために必要なものです。根拠なく一方的に取材を妨害した陸上自衛隊の対応を認めることはできません。特別職国家公務員である自衛隊員には、憲法に明記された「表現の自由」を尊重した対応を強く求めます。
琉球新報、沖縄タイムスの報道によると、事態は11月10日午後4時すぎに発生しました。同日から日米共同統合演習「キーン・ソード23」が沖縄県内などで始まっており、琉球新報の写真記者は自社腕章を着用し、分屯地周辺の民間地から訓練の様子を撮影していました。その際、自衛隊員2人が「写真を撮るのはだめなので(画像データを)消してください。消すところも見せてください」と記者に求めたといいます。琉球新報の島洋子編集局長は沖縄タイムスの取材に対し、「撮影は県民に演習の様子を知らせるための正当な取材。県民の知る権利に応えるための報道への介入と受け止められるような行為はあってはならない」と陸上自衛隊の対応を批判しました。また、第15旅団は両社の取材に対し、「分屯地の外から撮ることを全て規制するという姿勢は、基本的にはない」(琉球新報)「外部からの撮影を禁じてはいない。齟齬が出てしまった。今後、法令に基づいて対応するよう各部隊を指導していく」(沖縄タイムス)と、対応の行き過ぎを認めています。
自衛隊や米軍の拠点に対する敷地外からの写真・動画撮影は、マスメディアや市民団体が全国各地で日常的に行っています。これは、法令や各種の取り決めに従った抑制的な実施が求められる訓練などの実態をチェックし、問題点を市民に伝えるために必要不可欠なものです。軍機保護法などの法律で「知る権利」が著しく制限されていた戦前、戦中の反省を共有するマスメディアが市民と手を携え、声を上げて守ってきた「表現の自由」「取材の自由」を理由なく制限した今回の対応は看過できません。
強行採決の末に2013年に成立した特定秘密保護法に対して、新聞労連は法案段階から一貫して反対を表明しています。「秘密」の領域の無秩序な拡大は、権力による情報の独占や秘匿につながります。根拠なく取材を妨害した陸上自衛隊に厳重に抗議し、再発防止を強く求めます。
以上