特定秘密保護法の危険性を改めて訴える―恣意的な「秘密」の濫用を許さないー
2022年12月26日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義
特定秘密保護法で定められた「特定秘密」を漏洩した疑いがあるとして、自衛隊内部の犯罪を捜査する警務隊は12月26日、海上自衛隊の1等海佐を同法違反で書類送検しました。2014年12月の同法施行後、特定秘密の漏洩の立件は初めてで、防衛省は26日、1佐を懲戒免職としました。同法の審議中から反対を訴えた新聞労連や多くの市民が危惧した通り、政府は「何が秘密か」を明らかにしていません。権力者にとって不都合な情報や市民が必要とする情報が秘匿されるという懸念をそのままに、「秘密漏洩」の言葉のみが一人歩きしつつあります。今回は自衛官の情報漏洩ですが、市民や報道関係者に今後、「秘密漏洩」の嫌疑がかかる危険性はぬぐえません。自民、公明両党による強行採決で同法が可決された13年12月、新聞労連は「本日から秘密保護法の廃止を求める運動に取り組むことを宣言する」との声明を発表しました。その姿勢は、9年後の今も揺らいでいないことを強調します。
特定秘密は防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野を対象としており、22年6月末時点で計693件に上ります。省庁別では防衛省が392件と最も多く、漏洩に関わった公務員だけでなく、漏洩を働き掛けた民間人も懲役を含む罰則の対象としています。「軍機保護法」などの規制で記者や市民を縛った上、嘘で固めた大本営発表で破局に導いた戦前、戦中の政府の過ちを振り返ると、情報統制を突破して市民に必要な情報を取材する報道関係者も「教唆」「共謀」「扇動」の対象となりうる同法の危うさは言うまでもありません。
「反撃能力」と言い換えた敵基地攻撃能力の保有を容認し、平和憲法に基づく国是である「専守防衛」の骨抜きを図る自公政権は、ウクライナ戦争や北朝鮮のミサイル発射、中国の海洋進出で高まる市民の不安に乗じた軍拡路線を「安全保障政策の大転換」と主張しています。また近年は、公文書改ざんや国会での虚偽答弁が相次いでいます。抑制を失い、隠蔽を志向する権力が秘密の範囲を無制限に拡大すると、自由にものが言えない社会に変質していくことは明らかです。
国の情報は、主権者である市民のものであり、政治家や官僚の私有物ではありません。今、真に必要とされるのは情報統制ではなく、情報公開です。戦時中のような暗い秘密主義国家とならないよう権力を監視する役割を持つ私たち新聞労働者は、特定秘密保護法の廃止を強く求め、恣意的な「秘密」の濫用を決して許しません。