コロナ禍を理由とした首相・官房長官会見の人数制限を解除せよ
2023年4月28日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義
新型コロナウイルス禍を理由に、首相記者会見で人数制限が行われるようになって3年が過ぎました。コロナ禍で初の緊急事態宣言が出た当日の2020年4月7日の首相会見から人数制限は始まっています。以来、内閣記者会加盟の常勤19社から1社1記者の計19人と、地方紙や海外メディア、フリー記者からの抽選といった形式で、会見参加者が著しく絞り込まれています。首相会見は、一国のトップの考えを様々な角度から自由に質すことのできる貴重な場です。今年の大型連休が明ける5月8日からは、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げられます。政府は速やかに記者会見の人数制限を解除し、コロナ禍前の形式に戻すべきです。
コロナ禍以前、首相会見には約130席が設けられていましたが、2020年4月以降は29席に減らされています。また、平日に原則2回行われる官房長官会見も1社1人の人数制限が続いています。記者会見の人数制限は首相官邸だけでなく、地方の首長会見などの場でも見られ、コロナ禍を理由に記者の質問権が制限される事態が常態化する懸念を多くの記者が共有しています。
岸田文雄首相は、コロナの「5類」移行を決めた2023年1月の政府対策本部会議で「家庭、学校、職場、地域、あらゆる場面で日常を取り戻すことができるよう、着実に歩みを進める」と述べました。しかし、アフターコロナの首相官邸での会見の在り方を政府はいまだに示していません。市民の「知る権利」に重要な役割を果たす首相官邸での会見こそ、一刻も早く「日常を取り戻す」べき場面です。コロナ禍による人数制限は通常ではない対応であることを確認するだけでなく、記者会見は開かれた場であるという認識を首相官邸側、記者クラブ側の双方が持つ必要があります。
新聞労連は2010年に発表した「記者会見の全面開放宣言」で「質問をする機会はすべての取材者に与えられるべきです」と訴えています。全国津々浦々の行政機関で行われる記者会見を、市民の知る権利に応える場として機能させるためには、コロナ禍を理由にした人数制限が継続する首相官邸の記者会見の在り方を変えることが重要です。自律的で開かれた記者会見の実現には、会見の運営に携わる記者クラブの毅然とした自己改革も欠かせません。あらゆる取材者とともに記者会見の開放を推進する新聞労連は、首相と官房長官の記者会見の人数制限解除を強く求めます。