「戦争慣れ」せず、命の重み報じ続ける ― ロシアによるウクライナ侵攻開始から2年 ―
2024年2月22日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルによる2023年10月の軍事衝突をきっかけに、ハマスの壊滅を目指すイスラエルが大規模な軍事作戦を続けています。ウクライナとパレスチナに共通するのは、核兵器使用の脅威です。ロシアは世界最大の核兵器保有国であり、イスラエルは中東唯一の「事実上の核兵器保有国」と目されています。プーチン大統領はウクライナ侵攻で核兵器使用を示唆し、ロシアは23年11月、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回しました。イスラエルの極右閣僚は同月、パレスチナ自治区ガザに核爆弾を落とすのも「選択肢の一つ」と発言しました。非人道的な核兵器の使用を容認する為政者の思考は伝播します。
この危険な風潮に歯止めをかけるには、人道に基づいた想像力が必要です。東西冷戦の緊張が高まっていた1964年に中国新聞記者の金井利博氏(後の論説主幹)が発した「原爆は威力として知られたか。人間的悲惨として知られたか」という言葉は、威力としての核兵器を弄ぶ為政者が存在する今こそ、重く響きます。きのこ雲の下で傷付き、命を落とした新聞人の後輩である私たちは、戦争が常態化している今こそ、戦争の愚かさと命の重みを繰り返し、何度でも伝える責務があります。
ロシア当局は2月16日、反体制指導者・アレクセイ・ナワリヌイ氏が収監先の刑務所で死亡した、と発表しました。同氏はプーチン政権の不正・腐敗を告発し、収監中もウクライナ戦争を「愚かな戦争」と批判し続けました。彼の不審な獄中死の背後には、事実が明るみに出ることを恐れる権力が存在します。私たち新聞労働者は「言うべきことを言い、伝えるべきことを伝える」という信念を胸に、日々の報道に携わっています。遠い海外の出来事を、私たち自らの課題と捉え、事実を覆い隠す権力に抗う世界の仲間と連帯します。
以上