性暴力裁判訴訟の元原告への長崎市の謝罪を受けて(委員長談話)
2022年7月13日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)中央執行委員長
吉永磨美
原告が長年訴え続けてきた主張が、ようやく認められました。裁判で長崎市側は、男尊女卑に根差した、性暴力における誤った思い込みや偏見である「強かん神話」に基づく「過失相殺」主張をしてきました。これによって、元原告にのみならず、性的被害者の尊厳を傷つけるものとなりました。それについて、今回長崎市は、裁判所の判断に従い、その主張について「根拠なきもの」として謝罪しました。
公平、公正に弱者、被害者救済を行うべき行政機関がこのような考え方で対応する姿勢については、その問題性を認識し、この裁判をきっかけにより一層の自覚を持ってほしいと考えます。謝罪の通り、長崎市において、偏見に基づかない被害者救済が広く行われることを強く希望します。また裁判によらずとも、安心して被害者が相談でき、救済される行政が執り行われることに期待します。
謝罪がなされても、被害者が傷つき苦しめられた事実は消えません。その事実を風化させず、謝罪で元原告と交わされたやりとりをもとに、長崎市には性暴力、ハラスメントの根絶、そのもととなる偏見をなくす努力を続けてもらいたいと考えます。
さらに長崎市は自らが「公権力」であり、行政機関であるがゆえに掌握できる情報を持ち得ることで、権力を持てる特性があることを自覚すべきです。権力側は常に市民や報道機関、いわゆる他者との関係性を自覚し、弱い立場である人をおもんばかり、自らの権力性への自制を持つべきです。長崎市をはじめとして公的機関は、男女共同参画、人権を守る立場で、民主的に物事を進めていくことを希望します。
またこの裁判の判決と謝罪を受けて、新聞労連もより一層、働く者の権利、「報道の自由」を引き続き、堅持していくべく、組合員一丸となって団結していきます。組合員の人権を守ることで、報道の自由、表現の自由、まさに基本的人権を守ることにつながり、それが民主主義の土台に直結します。だからこそ、新聞労連は、職務上の性暴力、ハラスメントなど、組合員が抱える個別案件については引き続き、組合員全体の問題として、解決に向かう姿勢を大事にしていきます。
最後に、この争議をご支援くださったみなさま、弁護団のみなさま、長きにわたりご尽力をいただき、ありがとうございました。そして原告、労連の仲間たち、本当におつかれさまでした。これからも共に頑張りましょう。
以上