第112回定期大会報告

大会宣言~労連の旗の下、荒海を一歩ずつ進もう~

 新聞労連は7月24、25の両日、都内で「いのちと暮らし、平和を守り 新聞の未来を切り拓こう」をメーンスローガンに第112回定期大会を開催した。平和と民主主義を守るために新聞ジャーナリズムが果たさなければならない使命と、労連として新聞産業の未来像を模索する努力の必要性を再確認し、次期執行部に取り組みを引き継ぎ、強化していくことを決めた。

 大会冒頭、嵯峨仁朗委員長は「インターネットという黒船の到来によって新聞産業は危機にさらされる。惰眠をむさぼっていた経営陣は浮足立っているが、われわれは慌てず組合に結集し、乗り越えていこう」と呼びかけた。

 インターネットに押され、2007年に発表された前年の新聞広告費はついに1兆円を割り込んだ。発行部数も減り続けている。経営者は新たなビジネスモデルを示せず、定昇カットや一時金の大幅ダウンなど、人件費の「削減」に手を付けるケースも出始めた。コストを最優先に、正社員を派遣社員やプロパー社員に置き換える外注・分社化の動きも加速している。本来の経営責任を果たさず、安易な賃下げなど組合に痛みばかりを強いる経営者の無策を厳しく監視しなければならない。

 言論と表現の自由、平和と民主主義にも危機が忍び寄る。靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国」について、国会議員が「事前検閲」ともいえる要求を突きつけ、右翼の街宣車が押しかけ、上映を中止する映画館が相次いだ。沖縄戦における住民の「集団自決」(強制集団死)を取り上げた高校の教科書検定では、日本軍の強制という史実を歪曲しようとする露骨な動きがあった。国会内では安倍前首相の退陣を受け、発足した福田政権が、テロ対策特別措置法を衆院の数の力で成立させた。憲法「改正」に向け、改憲手続きを定める国民投票法が成立するなど、9条見直しも急速に進む。今まさに、平和と民主主義を支える新聞ジャーナリズムの役割が問われている。

 幸い、新聞を信頼する国民は多い。これは、戦争に対する自らの責任を深く反省し、戦後、「二度と戦争のためにペン、カメラを取らない、輪転機を回さない」と誓い、再出発した新聞人が、批判精神を忘れず権力に迎合せず、不断の努力を重ねて真実を追求してきた成果である。この努力を忘れたとき、読者の信頼は消えうせてしまうことを肝に銘じなければならない。そして、民主主義と言論を封殺しようとする暴力と圧力に対し、われわれは毅然として立ち向かい、決して屈しない。

 新聞産業で働く人々の命と健康も危機にさらされている。労連が実施した組合員意識調査では、「70人に1人が常に死にたいと思っている」との極めて深刻なデータが示された。孤立した職場環境と成果主義、パワハラ、限界を超える長時間労働-。このままではその活力は失われるばかりだ。時短を促進させ、労働者の命と健康を守る取り組み、ゆとりある職場環境をつくる運動を強化しなければならない。

 労連は2つのアプローチを始めた。ひとつは新聞産業の未来像を展望するための産業政策研究会(産政研)の設置だ。大会での中間報告では、新聞広告の問題点や新聞に関する法制度、携帯電話の3つの分野に関する報告がされ、今後より進んだ論議を重ねる。大会では、産政研に対する期待の声とともに、独自に社の経営分析に乗り出し、成果を出した単組などからの力強い報告もあった。

 もうひとつは、労連の活動とは何かを問うため、外部識者に依頼した検証会議の取り組みだ。同会議委員でノンフィクション作家の吉岡忍氏が報告の中で「新聞社で働く労働者で仕事に満足しているのは半数以下。忙しいから議論の場も時間もなく、別会社化や分社化などの荒々しい現実の中、内面的な危機が進行している」と指摘したことも、重く受け止めなければならない。

 労連の加盟人員は2万6000人を割り込んだ。このまま、労連という新聞労働者にとっての大きな幹がやせ細るのを見過ごすことはできない。派遣、契約、パートといった立場の弱い非正規や関連会社の労働者にも呼びかけ、連携に力を注ぎ、強力な組織を再構築する必要がある。

 消費税の増税、再販・特殊指定問題のほか、地上波デジタル放送の完全移行も目前に迫る。新聞産業を取り巻く情勢は厳しさを増すことは必至だ。濃霧が立ちこめ、暗礁が波間に潜む荒海を進むためには、労連が掲げる旗の下に団結する必要がある。一歩ずつ進んでいこう。

2008年7月25日 新聞労連 第112回定期大会

委員長は朝日新聞労組から(9月着任)

新聞労連検証会議、産業政策研が特別報告

 新聞労連第112回定期大会が7月24、25の両日、東京の文京区民センターで開催され、2008年度の運動方針を決定した。役員人事では08年度本部委員長および在阪副委員長を選出する朝日労組はいずれも選出中で、9月の着任に向けて引き続き進めることが報告された。一倉基益副委員長(上毛)と木部智明書記長(日経)を再任し、嵯峨仁朗委員長(道新)と本松徹副委員長(在阪=京都)は退任した。大会ではメインスローガンの「いのちと暮らし、平和を守り新聞の未来切り拓こう」を採択した。

 大会は司会の東京地連・内田智祥副委員長(毎日)の進行で始まった。議事に先立って08年4月にくも膜下出血で亡くなった宮古毎日労組の下地直樹副委員長の冥福を祈り黙とうを捧げた。議長団に田戸宣雄(毎日)、宮内輝文(南日本)両代議員を選出、議事に入った。MICの井戸秀明事務局次長(民放労連)、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の守屋龍一事務局長の来賓挨拶の後、嵯峨委員長が挨拶。

 嵯峨委員長は「06年の大会で就任したとき、新聞産業が転換期であること、労働運動が危機を迎えていることのふたつの危機感を感じていた。労働組合は職場だけでなく、地域や産業全体に影響を与え、社会をより良くする存在でなければならない。産業の危機だからこそ『ユニオンに帰れ』といいたい。20~30代の青年はもっと希望と誇りを持って新聞社で働きたいと思っているが、発言力も権限もない。だからこそ、そこに組合があるべきだ。転換期を生き抜くキーワードは『人』だと思う。ふたつの危機を乗り越えるために、産業政策研究会と検証会議の報告書を、議論するための出発点にしたい」と自身の2年間にわたる活動を総括した。

 検証委員の吉岡忍さんの特別報告の後、07年度財政報告を本部から提案し、採択された。続いて07年度実績批判を提案。元組合員の不当解雇闘争が労働審判で解決した株式従組、争議中の宮古毎日労組、会社再建闘争中の内外タイムス労組からの報告の後、産業政策研究会の研究員による特別報告があり、1年間の成果が報告された。

 続いて08年度の運動方針案と予算案を本部から提案。①賃金・労働条件を守る②非正規雇用者の組織化③時短やいのちと健康を守る④産業政策研究の充実⑤平和やジャーナリズムを守る||の5つの柱を中心にした方針に対して、代議員から取り組み強化を求める意見や、方針にもとづく活動報告など、2日間にわたってのべ16人が発言した。

 07年度実績批判と08年度運動方針案・予算案、大会スローガンを拍手で採択。役員改選では一倉副委員長、木部書記長の再任と、嵯峨委員長、本松副委員長の退任が承認され、08年度本部委員長、在阪副委員長は選出中となった。最後に会社との争議に奮闘している宮古毎日労組・山下誠前委員長の力強い団結ガンバローで閉会した。