株式会社徳島新聞社による夏季一時金低額回答に強く抗議する

 

 2024年9月10日
           関西新聞合同ユニオン 執行委員長 日比野敏陽
徳島新聞グループ支部 支部長・廣瀬睦季
全徳島新聞労働組合 委員長・千里達彦
新聞労連 中央執行委員長・西村誠

 一般社団法人徳島新聞社(社団)の分社化問題を巡り、編集部門を社団から切り離し今年4月に業務を始めた新会社「株式会社徳島新聞社(KK)」が、KKの社員で構成する労働組合「関西新聞合同ユニオン徳島新聞グループ支部(徳島新聞G支部)」の要求に対し、夏季一時金について基準賃金のわずか1カ月分との低額回答をした。徳島新聞G支部は粘り強く交渉しているが、KKは低額回答の根拠も明確に示さないなどの不誠実な対応を繰り返し、上積みをしていない。そのため、徳島新聞G支部は9月10日、徳島県労働委員会へあっせん申請を行った。

 社団は分社化に際して、KKの社員の賃金を社団の65%と著しく低い水準に設定した。社側は組合との団体交渉を経て賃金水準を75%と修正回答し賃金表を改定したものの、現段階において、実際に75%の水準に達する組合員は存在しない。さらに、KKの新設に伴い社団は新入社員の採用をしない方針で、今後は徳島新聞の編集を担う若い世代は給与水準の低いKKに入社することになる。徳島新聞は徳島が誇る地元紙であり、KKの待遇を上げていくことが、ニュース砂漠化を阻止し、ジャーナリズムを維持発展させていくことにつながる。そうした観点から、私たちはKKによる低額回答に断固抗議し、県労委のあっせんにも速やかに応じることを求める。

 今夏の一時金を巡り、徳島新聞G支部はKKに4・6カ月分を要求した。徳島新聞では現在、KKに出向している社団所属の職員とKKのプロパー社員が同じ編集職場で働き、同じ仕事をしている。そのため、社団と同じ水準の一時金が支払われるべきだというのが要求の根拠だ。しかし、KKの回答はわずか1カ月。社団の経営陣が一方的に宣告した「賃金水準は社団の65%」にも遠く及ばない格差だ。徳島新聞G支部は3度にわたって上積みを要求し、全国の新聞労連の仲間たちも抗議の声を上げたが社側は応じなかった。

 KKは部数減などの経営不振を理由に挙げたが、徳島新聞G支部が求めた経営情報の開示に真摯に応じず、具体的な説明はしていない。これでは、ただでさえ賃金水準を低く抑えられている上に、一時金が著しく低く抑えられる理由が分からず納得できない。また、社団職員とKK社員の間で生じる大きな格差は職場を分断させかねず、許すわけにはいかない。

 徳島新聞G支部は、就業時間内の組合活動を認めるようにも要求しているが、KKは頑として認めていない。にもかかわらず、団体交渉を就業時間内に一方的に設定し、組合員は貴重な年次有給休暇を使って団交に参加することを余儀なくされている。公益性の高いメディア企業にもかかわらず、KKが過半数組合である徳島新聞G支部と健全な労使関係を築くつもりがあるのかということにすら疑問符がついている。

 私たちはそもそも、社団による分社化を「次世代への搾取」だと指摘し、強く反対してきた。今年3月にはストライキも決行、大きなニュースとなり、徳島県民をはじめ日本中に徳島新聞が推し進める悪質な「丸ごと分社化」の問題点があらわになった。失望した複数の社員が徳島新聞を去る事態にすらなっており、今からでも分社化を取りやめるべきだと改めて強調しておく。

 分社化を強行した社団は、社団の従業員でつくる「全徳島新聞労組」の組合員に対しても、昇進差別による支配介入、経営情報の不開示といった不誠実団交を行っている。全徳島労組は10日、徳島新聞G支部とともに、県労委に対してあっせん申請した。全徳島新聞労組は徳島新聞G支部の闘いを全面的に支援している。全徳島新聞労組、徳島新聞G支部は経営側による横暴に対し、今後もともに立ち向かう考えだ。

 徳島県では今年の最低賃金の改定額が84円増と、全国で最高の上げ幅となった。長年の課題である、大都市圏と地方の最低賃金の格差是正に向けた取り組みとして評価できる。にもかかわらず、その徳島県の地元紙である徳島新聞が賃上げの動きに逆行していることを、私たちは容認できない。新聞社にとって、一番の宝は人材である。重ねてKKに誠意ある対応を求める。新聞労連は、全国の仲間とともに徳島新聞G支部の闘いを全力で支えていく。