社外言論活動の規制強化に反対する

2016年4月19日
日本新聞労働組合連合
執行委員長 新崎盛吾

 私たちは、新聞業界で働く労働者の立場から、記者個人の社外言論活動への規制強化に反対する。

 最近、外部媒体への執筆や講演などの社外言論活動を抑制する規定を新設したり、規制を強めたりする新聞・通信社が増え始めている。自社の記者らが社外に発表した記事などによるトラブルを防止し、社内のコンプライアンス強化を図る狙いがあるとみられる。しかし、言論、出版、表現の自由は、憲法21条で保障された最も重要な基本的人権の一つであり、この自由によって立つ新聞社であれば、なおさら個人の言論活動を尊重すべきだ。

 新聞労連の組合員の大半は、組織ジャーナリズムの中で取材活動に取り組み、自社の媒体で取材成果を示すことで、国民の知る権利に応えようとしている。ただ、すべての社員が自社の論調と同じ考えを持つことはあり得ないし、社と社員の間で記事掲載の可否をめぐる判断が常に一致するとも限らない。紙面の編集権は会社側にあるとしても、個々の社員が持つ表現の自由が狭められることは、あってはならない。

 私たちは、国民の知る権利や健全な民主主義を守るため、日々の取材活動に従事している。この目的さえ揺らがなければ、外部に記事を執筆するなどの社外活動は、多様な言論を守る上でも推奨されるべきだろう。明らかな事実誤認があったり、回復不能な人権侵害につながったりする記事でなければ、自らの姿勢を取材先などに明らかにした上で、あえて会社名を明記しなかったり、匿名で発表したりすることも認められるべきだと考える。

 新聞労連は、言論の自由を守り真実の報道を続けようとする新聞人を守るため、1997年に「新聞人の良心宣言」を発表した。個人の多様な価値観を尊重し、自らの良心に反する取材・報道の指示があった場合は、拒否する権利をも認めている

 組織に所属し、会社の名前を使って取材活動をする以上、会社への迷惑行為があれば就業規則などに基づき処分を受けることもあるだろう。しかし、コンプライアンス強化を求めるあまり、むやみに社外活動を規制したり、事前検閲と誤解される対応を取ったりしてはならない。国民の知る権利に奉仕し、権力を監視するという報道機関の役割をあらためて確認するとともに、社員を萎縮させないよう、あらためて各社の慎重な対応を強く求める。

以上