MIC声明:「公益性」を追加した助成金ルールの撤回を求める

「公益性」を追加した助成金ルールの撤回を求める

 日本社会はいま、公権力の恣意的、独善的な判断によって、憲法に基づいた自由な文化・芸術活動が危機にさらされている。

 文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会(芸文振)」が、映画『宮本から君へ』への助成金交付を7月に取り消していたことが発覚した。

 その理由は、出演者の1人であるピエール瀧さんが麻薬取締法違反で有罪判決を受けたこと。映画の内容は薬物使用と全く無関係にもかかわらず、芸文振は「国が薬物使用を容認するようなメッセージを発信することになりかねない」と主張して、交付取り消しの判断を下した。さらに芸文振は9月27日、その判断を正当化するように芸術文化振興基金の助成金交付要綱に「公益性の観点」を追加。「公益性の観点」から助成金の交付が「不適当と認められる」場合には、交付内定を取り消すことができるようにした。

 定義が明記されていない「公益性」というあいまいな基準が拡大されると、公権力の恣意的な判断がまかり通るようになり、「検閲」につながる恐れがある。実際、芸文振は今回、ピエール瀧さんの出演シーンを「カットするなど編集できないか」と作品内容に介入しようとし、制作会社が「完成した作品の内容は改変できない」と断ると、1000万円の助成金不交付に踏み切った。改訂された交付要綱の内容は、舞台芸術、美術など映画以外の領域にも影響し、日本の文化・芸術にとって由々しき事態だ。メディア・文化・情報関連の職場で働く労働者がつくる「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」として、憲法21条で保障された「表現の自由」を脅かす芸文振の一連の対応に抗議するとともに、「公益性」を追加した交付要綱の撤回を求める。

芸術文化振興基金は1990年、国際的に見て脆弱な文化予算を改善するために民間出資を入れて創設されたものだ。文化芸術基本法では、基本理念の筆頭に「文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない」(同法第2条)と「自主性」を掲げており、提案者は法案審議の中で、「文化芸術活動における『表現の自由』ということは極めて重要なもので、憲法第21条で保障されている権利。法律案は、表現の自由を直接は明記してはおりませんが、文化芸術活動における表現の自由の保障という考え方を十分にあらわしている」(自民党の斉藤斗志二氏、2001年11月21日の文部科学委員会)と約束していた。

 芸文振の一連の対応は、憲法や立法の精神を踏みにじるものだ。また、制作段階では予測できない事情をもって公的助成が左右されるようになれば、安心して制作活動に取り組むことが難しくなる。

 文化芸術活動への補助金については、文化庁も9月26日に国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金の全額不交付を決めた。テロ予告などの不当な脅迫・攻撃から芸術祭を守ることに力を注ぐのではなく、「来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず,それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した」(文化庁)と一方的な判断を下した。

 こうした公権力による恣意的、独善的な判断が続いては、日本社会において権力におもねらない自由な表現、文化・芸術活動が狭められる。

 MICは表現の自由を無視した公権力のあり方に対峙するとともに、公権力に屈せず「表現の自由」を守る人たちを応援する。

2019年10月28日
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、
映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)

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