ロシア軍による記者殺害と同国政府による言論弾圧への抗議声明

2022年3月16日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
        中央執行委員長 吉永磨美

 2022年2月24日、ウクライナに侵攻したロシア軍は首都キエフや東部の都市などで民間施設への攻撃を続けており、市民に多数の犠牲者が出ています。これは戦争犯罪であり、断じて許されることではありません。3月13日には、キエフ近郊で取材中だった米国人ジャーナリスト、ブレント・ルノーさんがロシア軍に銃撃されて死亡しました。同行し負傷した別のジャーナリストは「チェックポイントを通過したら銃撃された」と証言しています。詳細は不明ですが、プレス関係者であることを認識して狙ったのだとすれば言語道断で、厳しく断罪されるべき蛮行です。

 14日にもキエフ近郊で銃撃を受けた米FOXニュースのカメラマンが死亡しました。4日には英テレビのクルーがキエフ郊外で銃撃され、記者1人が負傷しています。現地の被害を市民の目や耳として取材する記者、ジャーナリストの身の安全の確保がなければ、取材・報道の自由を守れません。まさに、民主主義社会を支える根幹です。戦時だとしても、攻撃対象にはなり得ません。このような非人道的な暴力が国際社会で許されれば、民主主義社会の危機であり、市民への銃撃は戦争犯罪です。ロシア軍は市民への攻撃をやめ、ウクライナから即時に撤退するよう求めます。

 同時に、ロシア政府は同国内での言論・報道活動への弾圧を強めています。同国内では戦争反対の声を上げた市民が次々に拘束され、その数は数千人に上っています。3月4日にはロシア軍に関する報道や情報発信をめぐって、ロシア当局が「フェイクニュース(偽情報)」と見なした場合、最大15年の禁錮刑を科すことができる法律を成立させるなど、外国メディアを含む報道機関への規制も強化されています。さらにロシア政府は、情報統制を強める同国内からの報道、ソーシャルメディアについても遮断・制限し、市民の言論・表現の自由を奪うといった、由々しき事態に陥っています。

 そんな中、プーチン政権の統制下にあるロシア国営テレビで14日、ニュース番組の放送中にスタッフの女性が「戦争をやめて プロパガンダを信じないで」と書いた紙を掲げ、警察に拘束されました。市民に事実を伝えるジャーナリズムを守ろうと立ち上がった女性の勇気を称えるとともに、ロシア政府、ロシア軍による記者、ジャーナリストへの攻撃、侵略戦争を正当化するための言論・報道への弾圧を直ちに止めることを強く求めます。

 誰しもが、自由に発言し、真実を知る権利があります。市民の権利や自由や事実を伝え、権力監視を行うメディアの機能を剥奪することは民主主義社会の崩壊を招く独裁的な暴挙です。

 新聞労連はロシア政府、ロシア軍による、一連の言論や報道への弾圧・規制について、断固抗議するとともに、ロシアやウクライナで取材する記者やジャーナリスト、ジャーナリズムに真摯な新聞・通信社で働く労働者たちとの連帯を表明します。

以上