第138回新聞労連定期大会 大会宣言
新聞労連の旗のもとに集う私たちは4月21日、第138回定期大会を東京の会場参加とウェブ参加の併用で開き、メーンスローガンに「逆境に屈せず、持続可能な業界へ」と掲げました。
逆境とは新型コロナウイルス禍であり、それ以前から直面していた「ビジネスの危機」「信頼の危機」、そして「組織の危機」です。
新型コロナ禍により、ほぼ全ての単組で「業務命令型」の在宅勤務が導入され、取材や営業活動などに変化が強いられました。一方で、夜討ち朝駆けに象徴される「長時間過密労働」はなかなか改善されず、人員削減、ハラスメント、若手の離職が深刻化しています。将来にわたって働き続けられる職場作りは急務です。
そのためのポイントの一つが「多様性」です。日本新聞協会の調査によると、2020年4月現在、新聞・通信社の女性従業員の割合は初めて2割を超えました。反面、デスクやキャップといった社内で指導・教育的立場にある従業員を含む「広義の管理職」の女性割合は8.6%、執行役員を含む「広義の役員」は5.5%、会社法上の役員は3.8%にとどまっています。この状況では、ニュースの発信において価値判断が単一的になり、読者のニーズに対応できないばかりか、意欲のある人材が集まりません。いま世界的に、メディアに求められているのは多様性と公正性です。ジェンダー平等が実現されていない報道機関は、信頼に値する組織とはみなされず、読者に選ばれることもありません。
新聞労連は特別中央執行委員を中心に、シンポジウム開催や新聞協会への申し入れなどでジェンダー平等を訴える活動を続けています。業界内でジェンダー平等を実現し、誰もが働きやすい職場環境、読者のニーズに合った信頼されるニュースの発信を目指しましょう。
部数や広告収入の減少は以前から続いていますが、新型コロナ禍が追い打ちをかけました。それに乗じて経営側から、一時金の大幅減額、定期昇給の切り下げ・凍結、各種手当の廃止・カットなどの不利益変更提案が相次いでいます。財務状況や将来見通しの明確な説明をしないまま押し通そうとする不遜な態度も目立ちます。単年度収支では厳しくとも、内部留保が潤沢な社は多く、組合として財務データを開示させて詳細に分析し、毅然とした対応を取るべきです。
ジャパンタイムズ労組は不誠実な団交を繰り返す社に対し、労働委員会への救済申し立てなどで対抗し、整理解雇も撤回させました。東京労組は、労使合意のない一方的な手当廃止が労働契約法違反であることから組合委員長が代表して訴訟を提起し、組合としても労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てました。
新聞通信合同ユニオンの組合員では、共同通信社でデスク業務をしていた元契約社員が、賞与と退職金の大幅な差別待遇は労働契約法違反であることから、是正を求めて裁判をたたかっています。原告は大会の討論の中で「報道機関は他の企業の模範であるべきだ。報道機関の矜持を示してほしい」と訴えました。さらに、同ユニオンには、日経新聞の関連会社で働く年俸制の正社員で、役職定年を口実に一方的に賃金を減額された労働契約法違反とたたかっている組合員もいます。新聞労連を挙げての支援、共闘が必要です。
在日コリアンへのヘイトスピーチ、差別を批判した記事をめぐり、神奈川新聞記者がスラップ訴訟を起こされています。差別とたたかう記者への不当な攻撃、ヘイトを批判する言論に対する不当な圧力であり、絶対に看過できません。
長崎市幹部から取材中に性暴力被害を受けた女性記者が、市に謝罪と損害賠償を求めて起こした裁判は、市側の不誠実な姿勢に対し、多くの仲間たちが連帯して原告を支え、粘り強くたたかいを続けています。
働く者の権利、人間の尊厳を守るために声を上げた仲間たちを、新聞労連は全力で支え、ともにたたかっていきます。
今大会では、うれしい報告もありました。宮古毎日労組で唯一、契約社員に留め置かれていた組合員の正社員化です。組合結成から15年。ワンマン経営者による激しい組合つぶしに遭いながら、裁判所や労働委員会も活用し、不屈の闘志で労働組合としての筋を通してきました。単組の奮闘はもちろん、それを支えた沖縄地連、沖縄県マスコミ労協、そして全国各地の仲間たちの連帯と共闘がありました。宮古の仲間の権利の前進を労連全体で共有し、今後の各地でのたたかいにつなげましょう。
西多摩新聞労組の脱退承認議案については「新聞通信合同ユニオンは組合員1人でも加盟できる」として、組合運動の継続を模索する努力を求めた代議員発言もありました。個人加盟労組の存在意義・存在理由や、翻って既存の企業内労組の運動のあり方を問う代議員発言もありました。重要な問題提起であり、企業内労組の組織拡大や運動強化の可能性を議論していく必要があります。
新型コロナ禍の中、SNSなどで不確かな情報も氾濫した結果、新聞をはじめとする既存メディアの重要性が高まったと言えます。業界には多くの問題がありますが、現場から声を上げ、業界をともに支える関連会社、非正規社員、組合を支えてくれている書記たちを含めて、新聞に携わるすべての労働者が連帯し、今の状況をより良い方向に変え、持続可能な環境を築いていきましょう。
2021年4月21日 新聞労連第138回定期大会