「しんぶん販売考」第4話

「しんぶん販売考」第4話

キーワードは地域密着

 これまで新規読者の獲得に莫大な販売経費をつぎ込んできた新聞業界。部数至上主義を推し進めてきた販売政策は読者との距離を広げてしまった。抜本的な政策転換が求められている中、販売店も現読者をつなぎとめるサービスの構築へと動き出している。

 「読者の囲い込み」を狙って新聞各社はウエブを使っての会員組織化が活発だが、業界内でもいち早く読者の会員化に取り組んだのが中国新聞社の「ちゅーピーくらぶ」だ。会員への均一なサービス提供に取り組む一方、会員と接する販売店の育成にも力を入れている。中でも、中国新聞福山深津北販売所の所長吾川茂喜さん(52)は、カルチャー教室など地域住民との交流に積極的に取り組んでいることで全国的にも知られている。吾川さんに話を聞いた。

――エリア内の販売状況は

 私の販売所での中国新聞のシェアは約4割強で全国紙との激戦区。拡張は年縛り(1年契約)が主流ですが、「6・8ルール」(購読料半年分の8%までの景品提供を認める)は大きく崩れているのが現状です。違法な「S紙」(エスがみ、1年契約で3カ月無料購読サービス等のこと)使用の拡張行為もあると聞きます。業界の自殺行為はやめようと店主会で話し合うのですが、なかなか難しい。

――独自の顧客サービスに取り組んでますね

 子供写生大会やフラワーアレンジメント教室など地元サークルとタイアップしたカルチャー教室をはじめ、古紙回収や地域密着したミニコミも独自に発行しています。特に喜ばれているのは、登録すると誕生日にお花を自宅へ配達・プレゼントするサービスで、品物の優劣ではなく、「気配り」が好評を博していると思います。

▽販売店は多目的なシステム構築が急務

――これからの販売店の可能性は

 いま販売店が持っているものといえば、新聞販売にしか活用できない顧客データベース、新聞だけにしか対応できない配達システムというのが現実です。多目的に応用できるシステム構築が急務です。また、読者との信頼関係維持には販売所長の教育、資格制度なども必要になってくるのではないでしょうか。

――新聞業界に未来はありますか

 まず販売正常化して読者の信頼を回復するのが先決です。自動車でもいろいろな車種を時代に合わせてモデルチェンジする。新聞は変わることに慎重すぎて、読者が欲する情報のニーズを察知できていないのでは。販売だけでは限界があります。時代を見極めて、多様な紙面を工夫すればまだまだいけると思います。

 これまで新聞販売の現場は、決まった時間に新聞を各家庭に届けさえすれば成り立ったと言われる。ところが、大幅な部数増が見込めなくなった現在、販売店の地域密着度が愛読者囲い込みの重要な戦力となってきた。新聞販売店で組織する日本新聞販売協会は「拡材から人材への転換」を訴えているが、新聞本社販売局は拡材、拡張員重視だった経費を販売店従業員の人材育成に本気で振り向けていけるかが、大きなカギとなりそうだ。

【労連副委員長・小関勝也】※新聞労連機関紙2007年4月号より