「しんぶん販売考」第7話

「しんぶん販売考」第7話

業務提携で全体雇用守る

 新聞各社の販売哲学が変わらなければ正常化は無理だという河内さん。前号では正常販売のための抑止力として、もうひとつの「核」を作って対抗するしかないと語ったが、その「核」とは。引き続き河内さんに話を聞いた。

――もうひとつの「核」というのは本(新聞社-破綻したビジネスモデル)に書かれてある三社提携のことですか

 本には「毎日、産経、中日」と書いたが、北海道から九州まで業務提携連合を立ち上げて、印刷段階以降はなるべく合理化しようという考えだ。新聞労連的に言うと新聞労働者が減ると怒られるかもしれないが、僕はそんなことはないと思う。むしろ経営不安の会社で働くよりそういう業務提携で合理化し、トータルの雇用を守った方が良いと思っている。

――販売店制度や流通改革した後で購読料を下げられる可能性は

 読者が毎月情報収集や情報摂取にいくら使っているのか考えればいいのではないか。総務省の家計支出平均では1世帯あたり2万円を切っている。携帯電話に1万円、NHKに4千円、残りが新聞ということだが、僕の考えでは①生活パターンが変わったのだから土曜日の夕刊を止める。その代わり休刊日をなくす②国際的に見て日本の新聞は高い。そうすると値下げをする余地は全くないのかどうか考えてみる価値はあると思う、という二つの考え方だ。いま新聞を一番読んでくれるのは年金生活者だ。その方々は月に2万円もかけられないわけだから、新聞社も最大限の努力をしなければならない。地域販売センター化して体質改善すれば値下げも不可能ではないのではないか。

――販売職場は販売店との関係維持にだいぶ苦労している

 販売担当は自身の後ろには何十店という店主の顔が見えるし、その人たちの生活を守りたいと思っている。しかし、時代の流れを聞き入れずに今の状態を続けるというのは、親切だけど残酷だと思う。変わるならば若干余裕がある時に変えた方がよい。

――最後に新聞産業に働く後輩に対してメッセージを

 ニュースを取材して原稿を書くのは新聞記者かもしれないが、それを商品に仕上げるまでにはいろいろな人が携わっている。その作られた原版が印刷され、流通過程に乗り、デリバリーされるということは、そう簡単になくなるとは思っていない。
 コンテンツをつくり、精選し流しているのは新聞社だという原点は絶対に忘れてはいけない。この仕事が無くなるはずがない。ただ、これまで130余年あまりやってきた仕事内容が同じように続くかは分からない。そういう意味での構造改革をしないと全体の雇用も守れなくなると感じているのであって、なるべく早く着手した方が良いと思っている。

 インタビュー後、河内さんに刊行のきっかけを聞くと「今の業界を何とかしようと憂いている人たちへの『処方箋』を書きたかった」と語ってくれた。河内さんは本の表題を「新聞の復権を求めて」と付けたかったそうだが、出版社に「それでは売れない」とこの題名に変えたとのこと。破綻と復権では印象が大きく異なるが、読者の信頼を損ねている不正常販売を一掃することが復権への再スタートになるだろう。

【労連副委員長・小関勝也】※新聞労連機関紙2007年7月号より