「しんぶん販売考」第8話
「しんぶん販売考」第8話
浴衣姿が目に付く大阪市内で7月7日、在阪の弁護士や司法書士、消費生活相談員などで構成する「消費者行政市民ネット」が、新聞契約トラブル110番を行った。午前10時から午後4時までの間に36件の相談が寄せられた。同ネットのメンバーに会いに行った。
▼高齢者を狙った非常識な契約
主な相談は紹介すると――▽3年間のうち1年間無料にするからと勧誘を受け、断ったがビール券を渡され名前だけ書くよう言われて、仕方なくサインした。その後2回ほど電話で解約を申し入れたが「契約したのだからやめられない」と言われた。(85歳女性)▽同居の母(79歳)が来月から10年間の新聞購読契約をしていることがわかった。母は「名前を書いて」と言われて契約書にサインさせられたが、内容がわかっていなかった(57歳男性)▽高齢の母(80歳)が、父(91歳)の名義で5年前に契約。3年契約の契約書が7枚で合計21年間の契約。父は当時から認知症気味だった。解約を申し入れたが「日常家事債務なので有効に契約成立している。亡くなったら子供が引き継いで新聞購読料を支払ってくれ」と言われた(60代女性)
▼守られない公正競争規約
同ネット代表で弁護士の国府泰道さんは「この問題を放置すれば、いずれ国民の新聞に対する信頼を失うことになる」と、新聞の役割と販売行為とのギャップを指摘する。各地の消費生活センターでも新聞勧誘のトラブル件数は長年上位にランクしている。大阪府消費生活センターの2005年度消費生活相談でも訪問販売部門で5位以内入っている。
電話相談を行うため、同ネットでは新聞公正取引協議委員会が発行する「わかりやすい新聞販売の諸規則」を50冊買い込み、会員らで学習した。事務局長の井上智加子さん(司法書士)は「こんな立派な規約があるのに、なぜ守られないのか…」と不満を募らせる。また、電話相談実施の記者発表を事前に行ったのに、お知らせ記事を書いたのは1紙だけ。「なぜ新聞は自分たちの問題を報じないのか」と嘆く。
同ネットは、販売契約問題での発行本社への連帯責任を求めて新聞協会への申し入れを行う予定だ。あまりにもひどい契約内容については、訴訟を起こすことも検討している。
同ネットが耳にした事例は、氷山の一角に過ぎない。このような非常識な売られ方に怒る消費者団体の声に対し、新聞各社は「販売店や拡張団がやっていること」として目を背け続けている。こんな売り方をして読者が離れていくのは誰の目にも明らかなのだが、これまで長年続けられてきた前例踏襲型の販売政策を変えようと経営陣は本気で思っていない。俗に言う「販売のブラックボックス」をこじ開け、読者の信頼を得られる販売を創造していくきっかけをつくるのは、労働運動しかない。
――おわり。
【前労連副委員長・小関勝也】※新聞労連機関紙2007年8月号より