第108回定期大会報告

大会宣言

 新聞労連は7月25、26日の両日、東京・お茶の水の損保会館で第108回定期大会を開いた。働く者の暮らしと権利、そしてジャーナリズムを守る闘いは美浦克教(みうら・かつのり)前委員長から嵯峨仁朗(さが・じろう)委員長に引き継がれ、新執行部が誕生した。大会のメインスローガンは「平和のために新聞を守り、権利を広げ高めよう」。平和のためには言論の自由を守らなくてはいけない。そして言論の自由のためには新聞が、そしてそれを支える労組がしっかりとしなくてはいけない。この覚悟を私たちはもう一度胸に刻む必要がある。

 北朝鮮のミサイル発射を機に、敵基地への先制攻撃を容認するような発言が主要閣僚らから相次いだ。これは集団的自衛権を認めて自衛軍を海外派遣するという自民党の9条改憲論の延長線上にある考え方だ。この流れを先取りするように、自衛隊による米軍の補完、一体化が進んでいる。3兆円とされる一連の在日米軍基地移転費用も日本が負担するよう米側が求めているという。混迷するイラクからようやく自衛隊が一部撤収したが、これからも「アメリカの戦争」になし崩しに巻き込まれる危険性は高まっている。

 61年前に終わった戦争を振り返ると、そこに戦争を戒める「言論の自由」はなかった。いや、新聞は戦争を賛美し、国民をあおってさえいたのだ。戦後、新聞は自らの戦争責任に対する反省の上に再出発した。しかし今、日本が侵略戦争に乗り出したことへの反省を「自虐史観」と批判する勢力に、新聞はきちんと反論できているだろうか。小泉首相の靖国神社参拝によって、国家指導者の戦争責任もあやふやにされつつある。教育現場では、君が代斉唱・国旗掲揚の強制や愛国心教育を焦点に置いた教育基本法改正論議が進んでいる。「内心を裁く」として批判の強い共謀罪新設法案成立の意欲を与党は捨ててはいない。言論規制の動きが強まる中、新聞はまさに正念場を迎えている。

 こうした逆境にあって新聞労連は連帯して足元を固めなくてはいけない。乱売合戦を招く恐れのある「新聞の特殊指定見直し」は当面見送られたものの、販売正常化を求める努力を続けることはいうまでもない。新たに導入の動きが見られる裁量労働制や成果主義型賃金の問題点を洗い出し、長時間過密労働や不当な賃金抑制を許さないことも必要だ。まずは暮らしと心身の健康を守ること、それがすべての活動の出発点になる。

 一方、インターネットの興隆で新聞のあり方は大きな転換期を迎えている。販売・広告収入とも頭打ちの厳しい状況で、新聞経営者はネットを取り込む方策を模索するとともに、当面の利益を別会社化・人員削減に頼る方向に向かっている。新聞労連が支援し全下野労組が力を尽くした争議から得た「組織強化が最重要課題」という教訓を今後の反合理化闘争に生かさなくてはならない。今年5月には契約社員を初代委員長とする宮古毎日新聞労組や別会社の契約社員も加えた下野新聞印刷センター労組が結成された。今後も同じ新聞産業で働くパート・アルバイトや派遣社員ら非正規雇用労働者の組織化も視野に入れ、組織拡大・強化に取り組む必要がある。労連自身もシンクタンク機能強化など時代にあった改革を断行し、さらなる活動の充実を目指そう。

委員長に嵯峨さん(道新)選出

平和のために新聞を守り、権利を広げ、高めよう

 新聞労連第108回定期大会が7月25、26の両日、東京お茶の水・損保会館で開催され、新年度の運動方針を決定した。新委員長に嵯峨仁朗さん(道新)と在阪の新副委員長に波部光博さん(神戸デイリー)を選出、佐藤雅之書記長を再任した。美浦克教委員長(共同)、高橋一己(東奥)、丹羽孝仁(在阪=毎日)両副委員長は退任した。大会ではメインスローガン「平和のために新聞を守り権利を広げ高めよう」を採択した。

 大会は最初に東京地連・藤原耕二副委員長が議長団を推薦し、三橋孝志代議員(読売労組)、鑓水圭介代議員(時事労組)を満場一致で選出、議事に入った。続いてMIC・井戸秀明事務局長、憲法労組連の老田弘道・農協労連委員長、JCJ・守屋龍一事務局長が来賓のあいさつをした。

 美浦委員長は冒頭のあいさつの中で「特殊指定問題と全下野労組の別会社・転籍闘争の総括を特集として掲載したが、これらは底辺でつながっている。前者は1990年代以降のアメリカの外圧による新自由主義・規制緩和の流れの中にある。同時期に、総人件費抑制、印刷部門の別会社化政策が顕著になった。これらの流れの中で、いま正規雇用から非正規雇用への格差社会・下流社会、9条改憲による戦争社会への道がある」と情勢を指摘、「ILO憲章にもあるように労働組合自体が平和の権利であり、戦争を止めることが組合と新聞の究極の目的ではないのか。重要なのは新聞労連とそれぞれの単組の組織強化だ。そのための冊子『権利を手にするために』を活用して欲しい」と呼びかけた。

 議事は最初に宮古毎日新聞労組と下野新聞印刷センター労組の労連加盟を拍手で承認。真新しい組合旗が美浦委員長から、両労組の執行委員長に贈られ、大きな拍手に包まれた。本部活動報告、財政・監査報告に続いて、本部役員から05年度実績批判、労連本部書記局移転に伴う規約改正、06年度運動方針がそれぞれ提案された。

 2日間にわたった討論では延べ11人が発言。争議関連では全下野、東京、経営危機・経営再建では内外、奈良、埼玉、長野、企業再編では京都、沖縄・基地問題では琉球、近畿地連、命と健康・労戦問題では読売、36協定・裁量労働制で共同がそれぞれ発言した。

 大会は佐藤書記長と美浦委員長が討論をまとめ、実績批判ならびに運動方針、大会スローガンを拍手で採択した。規約改正は無記名投票によって賛成153、白票2、反対0で、可決要件の136票以上の賛成を得て可決された。役員人事は、嵯峨委員長と波部(在阪)副委員長の選出と佐藤書記長の続投を承認、在京の副委員長は東北地連に引き続き要請すること、労連本部役薦ローテ確立協議会の提案を確認した。最後に、大会宣言を採択、嵯峨委員長の団結ガンバローで閉会した。

 初日には専修大学の内藤光博教授が「『憲法改正国民投票法案』の問題点~与党案・民主党案の検討~」と題して講演した。内藤教授は「両案はほぼ共通の内容で『改憲派』に都合のいい法案だ。憲法改正阻止の立場からすれば、両案とも国民投票法案の成立を阻止することが重要だ」と解説した。