特定秘密保護法施行に強く抗議し、あらためて廃止を求める

2014年12月10日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 新崎 盛吾

 突然の衆議院解散による選挙戦のどさくさに紛れ、特定秘密保護法が12月10日に施行された。多くの反対の声を数の論理で抑え込んだ昨年12月の強行可決から1年。全国各地で続いた反対運動にもかかわらず、小手先の手直しだけで施行に踏み切った政府の姿勢に強く抗議する。

 新聞労連は、取材や報道の自由を侵害し国民の知る権利を脅かす「悪法」だとして、一貫して反対の声を上げ続けてきた。官庁の恣意的な判断で情報が隠蔽され、その「秘密」にアクセスしようとする者や漏らした者を罰する法律は、たとえ「報道への配慮」が明記されていたとしても、憲法で保障された表現の自由を束縛することは明白だ。国際的な労働組織からも「行政の情報統制は独裁国家への道だ」との懸念が示された。私たちは、権力の情報隠しを容認し取材活動を萎縮させる悪法の廃止を、今後も訴え続けていく。

 これまでも、政府の機密情報を入手した新聞記者が逮捕されたり、取材目的の行動が違法行為に当たるとして記者が書類送検されたりしたケースは少なくない。1972年に沖縄返還をめぐる密約をスクープした毎日新聞の記者が、国家公務員法違反の罪で有罪判決を受けた「西山事件」はよく知られているが、秘密保護法の施行で同様の事態が起きる可能性は高まっている。捜査当局は世論の反発を恐れ、逮捕という分かりやすい形は避けるかもしれないが、さまざまな方法で不都合な取材活動に圧力をかけてくることが予想される。私たちは広くアンテナを張り巡らせ、感覚を研ぎ澄ませて当局の動きを監視し、不当な行為を公表するなどして対峙する決意だ。

 新聞労連の調査では「情報提供者が萎縮して取材に応じなくなる」「米軍や自衛隊の取材を避ける傾向が強まる」などと、現場から懸念の声が寄せられた。取材活動への悪影響は明らかだが、「権力監視の手を緩めてはならない」「萎縮することなく頑張りたい」との力強い決意表明もあった。新聞労連は、秘密保護法の施行後も運用状況に目を光らせるとともに、反対運動を風化させることなく、メディアの仲間と連帯して国民の知る権利を守る活動を続けることを宣言する。

以上