奈良県香芝市議会議長による議場の写真撮影制止に抗議する
2024年9月19日
新聞労連 中央執行委員長・西村誠
奈良新聞労働組合 執行委員長・松本裕行
奈良県香芝市議会で9月2日に開かれた9月定例会の本会議で、川田裕議長らへの不信任決議案の審議が行われた際、議会事務局職員が奈良新聞による写真撮影を制止した。同じく議場で取材していた朝日新聞と読売新聞、NHKの撮影は認められた。職員は理由を議長の指示とした。
川田議長は2日の本会議後、奈良新聞などの取材に対し理由を「偏向報道と思えるようなことがあったから」と答えた。具体的な記事や内容については「細かい部分は答えない」と説明を避けながら「許可していない写真を使ったら訴える」と言及し、記者に脅迫めいた表現で圧力を加えた。
奈良新聞社は、偏向報道はないとした上で、3日付で川田議長に「具体的な説明もないまま一方的に撮影を不許可とするのは行き過ぎた議長権限の行使であり、市民の知る権利を奪う」「意に沿わない報道機関に対する圧力と言わざるを得ない」との抗議文を送付。香芝・大和高田市政記者クラブも3日、川田議長に奈良新聞の撮影を禁じた理由などを尋ねる質問状を送っている。香芝市の三橋和史市長も取材に対し「公の権力行使に携わる方は言論の自由、表現の自由をしっかり尊重すべきだ」と指摘した。
川田議長が撮影を禁止した背景には、7月10日の市議会本会議で自身の不信任決議の動議が不成立になった際、批判的な記事が奈良新聞や朝日新聞などに掲載されたことがある。川田議長が動議の賛成議員の起立数を数えず、着席した後に「賛成者なし」と判断し動議を不成立としたため、奈良新聞は当時の記事の見出しで「起立無視し『不成立』」と報じていた。
川田議長は、9月5日に奈良新聞の取材に再度応じた際、この「無視」との表現や、奈良新聞デジタルの記事で賛成議員が起立した瞬間の写真を掲載したことなどを「偏向報道」と説明した。「市民から苦情の電話があった」ともしているが、奈良新聞は事実を報じたに過ぎず、偏向と指摘される内容ではない。
市議会議長という公権力行使に携わる立場の人物が、市民の知る権利に奉仕すべく取材活動に取り組む報道機関の記者やカメラマンに対し、事実無根の理由により一方的に撮影を禁止することは看過できない。川田議長に二度と同様の事態を起こさないように求める。