委員長談話「長崎市性暴力訴訟判決に対する市の判決受入れ判断について」
2022年6月7日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 吉永磨美
長崎市の幹部から2007年、取材中に性暴力を受けたとして、女性記者が長崎市に損害賠償などを求めた事件(平成31年(ワ)第114号)の裁判において、2022年5月30日、長崎地方裁判所民事部(天川博義裁判長)が原告の主張を認め、同市に約2000万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。これを受けて、長崎市は6月7日、判決を受け入れ、控訴しない意思を示しました。
田上富久長崎市長は記者会見で、「できる限りの情報を整理して、証拠を出して主張し尽した、真摯に受け止める必要がある、反省して必要な見直し、原告が職場復帰していく視点からも受け止めることにした」と述べました。取材活動中における公権力による取材妨害についても、「公権力が関係しているところで言うまでもない」「取材活動が難しくなることがあってもならない」「取材の在り方をマスコミのみなさんと考えていきたい」という意思を示しました。また市長自らの減給と原告への謝罪も同時に行う意思を示しています。さらに田上市長は「すべての市民が安心安全に暮らせるよう、事件を忘れず記憶して平和な街を目指していきたい」などと話しました。
市の受け入れに対し、新聞労連の仲間として、原告の労苦が報われたことに安堵するとともに、会見で田上市長が述べている通りの改善を着実に進めることを望みます。事件から提訴までの12年間、原告は市が責任を認めて、謝罪するよう繰り返し求めたり、14年には日弁連から謝罪と再発防止の勧告を受けたりしたにもかかわらず、市が応じなかったことで提訴に踏み切りました。性暴力被害者の切実な訴えを受け入れず、裁判にまで発展し被害者を苦しめたことについて、残念でなりません。長崎市におかれましては、性暴力被害者を苦しめるような対応の過ちを繰り返さないことを求めます。
真の平和都市として、着実に歩まれることを希求します。真の解決は、裁判で原告が指摘している、市が主張ににじませた女性蔑視や女性への差別や偏見による強かん神話を撤回し、会見で述べた改善点を実践することで実現することでしょう。
また本日の市側の判決受け入れは、長らく原告を支援してきた長崎市民のみなさま、労働組合の仲間たち、そして性暴力、セクシュアルハラスメントなど性的被害について、勇気を持って告発した被害者たちの思いと訴え、当事者が推し進めてきた被害撲滅の運動やさまざまな形で連帯し、支えようと心を寄せてくださった思いが後押ししたものと考えます。全国のみなさんから温かいご支援をいただきまして、本当にありがとうございました。労働組合活動として組合員の苦しみを共有し、復帰に向けて連帯できたことをうれしく思います。
このたびの勝訴確定が原告の労苦に報い、あらゆる暴力や差別や偏見で傷つき、声を上げられずにいる人々の尊厳の回復と「仲間とつながり社会を変えられる」という希望につながることを願ってやみません。