核兵器廃絶 首脳は具体的な議論をーG7広島サミットに向けてー
2023年5月15日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義
中国新聞労働組合
執行委員長 田和徹
広島市で5月19〜21日、先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれます。日本政府は、世界で最初の被爆地ヒロシマに核兵器保有国を含む首脳が集う意義を踏まえ、核兵器廃絶に向けた具体的な議論に踏み出し、世界をリードすべきです。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、核兵器を巡る世界情勢は悪化の一途をたどっています。ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用を示唆し、ベラルーシへの戦術核配備を進めているほか、米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止しました。一方で、英国もウクライナへの劣化ウラン弾供与を決定しました。韓国は、北朝鮮による核攻撃抑止を図るため、米国の「核の傘」強化を米韓首脳による「ワシントン宣言」で打ち出しました。日本国内では軌を一にして、核共有に向けた議論を求める声がやみません。にらみ合う国同士は互いに猜疑心を膨らませ、核抑止力強化の口実を与えあっている状況です。
そのような逆風下で、広島サミットには米国、英国、フランスに加え、枠外で参加するインドの計4カ国の核保有国の首脳が訪れます。期間中、各国首脳による広島平和記念資料館(原爆資料館)の訪問、被爆者との面会が計画されています。核兵器は時間を越えて、人の命を奪い続け、傷つけ続けている現実に、世界のトップが正面から向き合い、世界に発信する機会にしなければなりません。
広島選出の岸田文雄首相は、「核なき世界」をライフワークに掲げ、核軍縮に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」も昨年発表しました。サミットでは、核軍縮もテーマです。そこでは、どうすれば核兵器使用を回避できるのか、廃絶に向けて動き出せるのか、誰が、いつ、どのように行動すべきか、具体的に語られる必要があります。ウクライナ戦争の終結は急務です。そのための各国の結束は必要ですが、ヒロシマが核抑止力の論調を強めることに加担する場になってはなりません。核抑止力は、核兵器の使用リスクと表裏一体です。核の脅しが過熱する今こそ、そのリスクを高めるのではなく、脱却を考え始めるべきです。
核兵器のない世界を求める声はうねりになりつつあります。2021年1月に発効した核兵器禁止条約は、署名が92カ国・地域、批准は68カ国・地域(23年1月現在)にのぼります。日本は米国の「核の傘」に依存し、署名はおろか締約国会議へのオブザーバー参加もしていない状況です。廃絶を願う方針と明らかに矛盾します。日本政府主導による真摯な議論を求めます。
最後に、サミットの取材で広島を訪れるジャーナリストに呼び掛けます。大国の為政者の声を取材するだけでなく、核兵器のない、戦争のない世界の実現を切実に求める被爆地の市民や、老いを深める被爆者の肉声に耳を傾け、世界に広く伝えてください。新聞労連に結集する私たちは、核抑止力に依存せず、核兵器廃絶を求める市民とともに歩みます。