徳島新聞社の「丸ごと分社化」強行に抗議する

2024年4月1日
全徳島新聞労働組合
委員長 阿部 司
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義

 一般社団法人徳島新聞社(社団)の編集・総務系職場の分社化問題で、会社側は4月1日、賃金水準を大幅に抑えた新会社「株式会社徳島新聞社(KK)」に編集系職員約90人を出向させる人事を強行しました。2025年卒以降の新卒者の採用は一切、社団では行わず、KKなどの関連会社ですべて行うという新聞業界でも前例のない、悪質極まりない「丸ごと分社化」です。全徳島新聞労組や、4月1日付でKKに移行した関連会社「徳島新聞メディア」の労働者が個人加盟する関西新聞合同ユニオン徳島新聞グループ支部が3月14日に決行したストライキは大きなニュースになり、「次世代搾取にNO!」という私たちの主張は共感の輪を広げています。しかし、経営陣は私たち、そして社会の声を無視して分社化を強行しました。職場に格差と分断を広げ、労働者の士気を下げるだけでなく、社会の常識になっている「若手の待遇向上」に逆行する所業は、「人材搾取企業」そのものです。さらに職場環境が一変することが容易に想像できるにも関わらず、提示当初から社側は「社の専権事項」で組合との交渉事ではないと言い張ってきました。長い年月をかけて築いた労使の関係を無視した行為です。私たちは会社の蛮行に抗議します。今後も分社化に反対し、徹底的な批判を続けます。

 KKの賃金水準を社団の75%に抑える一方で、経営陣は「新聞の仕事はやりがいがあるから従来通りに採用できる」と豪語しています。しかし、新聞労連には、就職活動中の学生から「経営失敗の責任を新入社員に押し付けるのはおかしい」「時代錯誤も甚だしい」「やりがい搾取はやめろ」と痛烈な批判が続々と届いています。マスコミ各社は以前のような就職人気企業ではなく、社団の労働条件でも求人難は深刻です。25年卒の採用活動においては、低賃金のKKで新入社員を採用せず、社団での採用を継続することを求めます。

 分社化を強行した経営陣は、読者の信頼に応えようと奮闘する私たち労働者を「削減可能な人件費」としか捉えていません。極端な人件費抑制に走る必要がない健全な財務状況を堅持することのみに奔走し、「徳島を『ニュース砂漠』にしないための分社化」と倒錯した主張を繰り返しています。分社化を強行する経営陣への絶望を理由に今春、複数の仲間が徳島新聞から去りました。新聞発行を支える私たち、そして次世代の絶望が「ニュース砂漠」を広げるという事実に、経営陣は目を背けています。

 会社は23年11月に分社化計画を突如提示し、わずか4ヶ月半の短期間で分社化を強行しました。全徳島新聞労組は新聞労連に結集する全国の仲間の支援を受けて、ありとあらゆる対抗措置を取りました。その成果として、4月1日に始動したKKで過半数労働組合を組織することに成功しました。今後は、過半数労組となった関西新聞合同ユニオン徳島新聞グループ支部が、全徳島新聞労組、新聞労連と連携して、KKの労働条件向上に尽力します。会社側がKKの労働条件を好き勝手に決めようとしても、過半数労組の強力な交渉力で対抗します。

 新聞業界の分社化は1990年代から本格化しています。分社化を強行されても、新会社で労組を組織したり、新会社の従業員を本社員に登用させたりする実績を新聞労連は積み重ねています。経営側の強引な分社化攻撃は今後も続くことが予想されます。徳島での粘り強い闘いを財産に、私たちは職場の分断を許さない取り組みに一層、力を入れます。

以上