共謀罪と同質のテロ等準備罪法案に反対する声明
2017年2月23日
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 小林基秀
政府が今国会への提出を目指す「テロ等準備罪」法案に、新聞労連は反対し、提案断念を求める。同法案は、かつて3度廃案になった「共謀罪」と骨格は同じであり、表現や思想の自由を侵害し、監視社会を招く恐れがあるなど、数々の重大な問題点を抱えていると考えるからだ。
テロ等準備罪を新設する「組織犯罪処罰法改正案」は、犯罪の実行前でも、違法行為の計画を複数の人が合意・準備したと捜査機関がみなした場合に摘発する制度だ。政府は、適用対象は「組織的犯罪集団」に限定し、「一般市民が対象となることはあり得ない」と説明してきたが、2月16日の政府統一見解では、普通の団体が性質を一変させた場合は組織的犯罪集団になり得るとした。その認定をするのは政府の一部である捜査機関だ。政府に批判的な団体を恣意的に対象とする恐れや、少なくとも委縮させる懸念は拭えない。
政府は、今回の法案はかつての共謀罪よりも適用を厳しくしたとして、計画(共謀)だけでなく「準備行為」も必要だと主張する。しかし、何が準備行為となるかの判断も捜査当局に委ねられる。そもそも、犯罪が公然化する前の計画や準備の段階で摘発するには、人々の日常的な会話や電話の盗聴(傍受)、電子メールなどの通信記録の膨大な収集が必要になる。報道によると、金田勝年法相は国会で、通信傍受の対象とすることは「考えていない」としつつ、「犯罪や捜査の実情を踏まえ、導入の必要性の観点から検討すべき課題だ」と将来的な導入に含みを残した。「テロ対策」の名の下に私たちの生活や活動が監視されれば、自由にものが言いにくくなるだけでなく、人権侵害の懸念が強い盗聴が広く行われ、監視社会につながる危険性が潜んだままだ。それは、私たちが望む「成熟した民主主義・市民社会」とはほど遠い。
政府は、特定秘密保護法により自らの情報は覆い隠す一方、テロ等準備罪により市民の情報は丸裸にしようというのか。共謀罪やテロ等準備罪は、その危険性から現代の治安維持法と指摘する法学者は少なくない。私たちは報道に携わる者の責務として、過去に無謀で非道な戦争へ突き進んだ教訓を決して忘れず、法案の問題点を社会に伝えていく。
以上