MIC声明・過労自殺の悲劇を繰り返すな
2016年11月2日
日本マスコミ文化情報労組会議
議長 小林基秀
広告会社・電通の新入社員、高橋まつりさんが昨年末に過労自殺を遂げたことが大きな社会問題となった。高橋さんのあるべき未来に想いを馳せるとき、悔やんでも悔やみきれない気持ちでいっぱいになる。そして、同じメディアの現場で働く仲間として、彼女の命を守れなかったことを、心から申し訳なく思う。
事件を受けて電通は、午後10時から午前5時まで全館消灯するなど長時間労働の抑制をはかる対策を打ち出しているが、過去にも同社社員の過労自殺や過労死があったという事実を踏まえれば、問題の根は深いと言わざるを得ない。また、高橋さんのツイートには、上司からのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを疑わせる内容もある。会社に対し、早急な事実関係の調査を求める。
IT化・多メディア化などにより業務の専門化・複雑化が進み、メディア関連の業界で働く労働者の負担は飛躍的に増大している。メディア関連企業が新卒の募集をかけても人が集まらなかったり、採用した新人がすぐに退職してしまったりする事態が相次いでいる現状を考えれば、もはや業界全体として労務管理や社員教育のあり方を見直す必要があると言える。
メディア業界では、全体として長時間労働が常態化しているうえ、裁量労働制の導入などで企業の労務管理そのものがあいまいにされかねない危険性が増している。「裁量」とは名ばかりのサービス残業があらゆる職場で横行しているのが、残念ながら業界の実態となってしまっている。こうした風潮を改め、労働者の命と健康を守るのは使用者の責任に他ならないが、このように長時間労働が長年にわたって当たり前になってしまっている現状を、労働組合としても厳しく受け止める必要がある。
私たちはメディアの労働者として、三六協定の残業上限規制の徹底、安全衛生委員会活動の活性化やストレスチェック制度の活用など、あらゆる手段を通じて命と健康を守る要求実現のための取り組み強化を進めたい。終業から始業の間に一定の時間を置いて休息させる「インターバル規制」の導入も過労死を防ぐ点で重要だ。悲劇を繰り返さないための建設的な労使協議が、各職場で実現することを強く期待する。
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)