第118回定期大会報告
大会宣言~権利としての復興目指して~
新聞労連は7月21、22日の両日、東京以外では初めてとなる東日本大震災の被災地・仙台で第118回定期大会を開催した。メーンスローガンは「社会的連帯に私たちの希望を」。未曾有の災害・惨事の中で、復旧・復興に向けて幅広く連帯の輪を広げて、新聞労働者・労働組合としての責任を果たしていく決意を共にし、次期執行部に取り組みを引き継いでいくことを決めた。
大会冒頭、東海林智委員長は「社会的連帯を希望とするための行動を」と呼びかけた。震災対応について、編集、製作・印刷・システム、広告・営業・総務の3分野に分かれて開かれた分科会では、被災地労組らから震災当時より現在に至るまでの重い報告が相次ぎ、一般参加も含む出席者が議論を深めた。
3月11日に発生した東日本大震災の死者・行方不明者は、2万人に達する。東京電力福島第1原子力発電所事故が長期化していることも加わり、今なお10万人近くが避難生活を強いられている(9万9236人、内閣府・6月30日現在)。新聞産業では、福島民友の組合員熊田由貴生(くまだ・ゆきお)記者のほか、販売店従業員や家族が多数犠牲になった。被災地全体が重苦しい空気に包まれる中でも、新聞は1日も欠かさず発行され、読者に届けられた。震災を通じ、新聞の信頼性が増したことは、新聞産業で働く者にとっては救いだった。朝日、毎日、読売、産経の全国4紙が4月下旬に首都圏、近畿圏で実施した共同調査によると、震災・原発事故以降に重要度が増したメディア・情報源として新聞を挙げた人は86.2%とトップだった。新聞はライフラインの一つであることがあらためて証明された。
しかし、新聞産業を担う労働者の環境は厳しい。合理化、人減らしの波はとどまるところを知らない。電子メディアの有料配信が広がり、記者の負担はますます大きくなっている。経営側のコスト圧縮策としての印刷受委託が急速に進み、現場の雇用、労働条件の確保が危機にさらされている。11春闘、夏闘では、十分な交渉がないまま定昇の凍結を強いられたり、震災の影響を先取りした労働条件切り下げ提案が出たりした。職場ではメンタルヘルスによる休職、退職が目立つなど、「命と健康」の問題も深刻化している。職場や生活の崩壊を招く安易な合理化は許してはならない。
労連は10年度、惨事ストレス対策に力を入れたが、震災の発生によりその重要性が改めて認識された。筑波大大学院の松井豊教授を中心とする「報道人ストレス研究会」とともに、惨事ストレスに対する対処方法、システムの構築を進め、2月には労働安全衛生学校の学習会を開いた。震災発生後には同研究会がまとめた取材対応マニュアルなどを配布、各単組が教宣ニュースで注意を呼び掛けるなど取り組みが生かされた。今後もアンケート調査や聞き取りを実施し、心のケアや安全対策に役立てていく。
07年にスタートした産業政策研究会は、昨年9月に報告書「扉と鍵」を発表。11月には仙台市で全国集会を開催し、34単組から参加した80人が新聞の近未来像を模索するなど研究成果を広める活動を展開した。来期はメディア、販売、広告、技術革新など多岐にわたる産業課題について、より戦略的な政策を打ち出すために、「第2期」の活動を始める。常設のシンクタンクとしての役割を果たすよう研究を進める。
また10年度も経営分析講座を実施。労働条件切り下げ提案があった場合は、合理的な説明を求め、役員全員の経営責任を明確化させる必要がある。販売部数の減少、広告収入の激減といった経営側の論理に対抗するためにも、労働組合は経営分析力を一層磨いていかなければならない。
また震災を受け、労連本部、地連、各単組がそれぞれにカンパやボランティアなど支援活動を展開。活動を通じて、それぞれに支援の輪を広げるなど「共助」の理念を実践した。
大会の討議で、河北新報労組は「明日がどうなるか見えない中での支援物資、メッセージは涙が出るほどありがたかった。みなさんの支援があれば何でもできるように思える」と連帯の重みを訴えた。河北仙販労組の組合員は、折り込みチラシを利用した被災販売店への支援活動を報告。岩手日報労組は「被災地の復興はまだ見えない。一人一人が被災者に思いを致してほしい」と呼び掛け、福島民友労組は「原発事故の収束は見えないが、全国のみなさんから指導をいただき被災者に向き合っていきたい」と決意を示した。震災で本社社屋が被害を受けた茨城労組は、厳しい状況だからこそ社に情報開示を徹底させることの重要性を訴えた。さらに神戸新聞・デイリースポーツ労組から被災地販売店への電動アシスト自転車支援活動について報告があり、支援の輪を広げて継続的な復興支援を行う必要性を呼び掛けた。
私たちは今大会で、新聞労働者として読者である被災者、市民に寄り添い、連帯と助け合いの精神によって活動を強化する決意を固めた。労働・生活環境の向上と、より良い紙面作りのため、また平和と人権、言論・表現の自由を守るため、労連の旗の下に団結し、力強い運動を展開していかなければならない。労働者の尊厳を守るため、争議を勝ち抜こうと頑張っている仲間を全力で支えよう。非正規労働者の相談窓口を作り、組織化を進めよう。地域、他産業、世界の労働者との共闘を強化しよう。多くの仲間と一歩ずつ前へ進み、希望をつかもう。そして、被災地市民とともに恩恵としての復興ではなく、権利としての復興を目指し共に歩もう。
2011年7月22日 新聞労連第118回定期大会
東海林委員長(毎日)を再選
被災地に連帯と希望を~仙台で118定期大会
東日本大震災の被災地に思いを込め、連帯へ決意もあらた――。新聞労連は7月21、22の両日、仙台市青葉区のハーネル仙台で第118回定期大会を開いた。史上初の地方開催には、交通難などをおして全国から代議員ら200人近くが参加。震災体験を共有するとともに復興と労働組合のあり方を考える論議を繰り広げた。メインスローガン「社会的連帯に私たちの希望を」を掲げた新年度方針は原案通り承認し、東海林智委員長ら三役を再任した。大会に先立つ20日には同区内の河北新報社ビル会議室で第5回拡大中央執行委員会を開いた。
会議の冒頭、全員で震災犠牲者に黙とうを捧げ、議長に北川功(毎日)、岩楯達弥(時事)の両代議員を選出。東海林委員長はあいさつで新聞の社会的使命を再確認し、被災地と市民の側に立つ復興と産別の枠を越えた共闘を呼びかけた。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)の平川修一事務局長、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の阿部裕事務局長がそれぞれ来賓あいさつした。
被災地の課題
市民団体の東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長で弁護士の菊地修さんが基調講演し、住民不在の県の復興会議を批判。憲法25条などに基づき国が国民の住宅再建などに責任を負っていることを強調し「権利としての復旧」を求めた。
代議員は被災職場の課題を共有するため初日の午後7時から三つの分科会を開催。職種ごとの突っ込んだ質疑などで論議を深めた。
日本航空(JAL)と旧社会保険庁の不当解雇撤回を闘うそれぞれの闘争団にも大きな拍手が贈られた。
書記長交代は9月
3年間の活動報告を昨秋まとめた産業政策研究会の櫛引素夫さん(東奥日報)は、研究の一部が地方紙に活用される例が上がり始めたとした上で「産研の議論は深めるほどジャーナリズムに立ち返る」などと報告し、近く発足する次期研究活動に期待を込めた。
全国役員推薦委員会の高安厚至委員長(毎日)は、2012―13年度の委員長を京都労組に要請し、神戸デイリー、新潟日報両労組には書記長ローテ入りの検討を要請していることを報告。今回交代予定だった書記長人事は、震災の影響を受けた河北新報労組が約2カ月遅れで選出することを約束し、それまで藤本勝也氏(時事)が引き続き務めることとなった。
一般討論
討議では、販売所へ電動アシスト自転車を贈る運動(神戸)▽がれき撤去ボランティア(岩手)▽折り込みチラシへのカンパ(河北仙販)などの支援活動の報告が相次いだ。解雇撤回裁判(ブルームバーグ)▽不当労働行為救済申立(宮古毎日)などは優位な闘いが進み、印刷会社の新入プロパー社員を組織化(京都)させた成功例の発表もあった。執行部に対しては、組合員減少で収入も減る本部財政に一層の節減を求める意見やナショナルセンター連合への加盟を提案する意見もあった。
藤本書記長が討論のまとめを報告し、2010年度の財政報告と実績批判、11年度の運動方針と予算は原案通り承認。最後に大会宣言を採択し、地元河北新報労組の樋口隆明委員長のガンバロー三唱で締めた。
会場で呼びかけた東日本大震災復旧・復興支援みやぎセンターへのカンパは計7万35円が集まった。