「秘密保全法」に反対する特別決議

「秘密保全法」に反対する特別決議

2012年1月26日
日本新聞労働組合連合第119回臨時大会

 政府の情報保全に関する検討委員会が今通常国会への提出に向けて準備を進めている「秘密保全法制」について、新聞労働者で作る新聞労連は、国民の「知る権利」や報道の自由を侵害する恐れがきわめて強いことから、法制の整備に強く反対する。

 政府の設置した「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」は、昨年8月、同法制についての報告書を公表し、政府の検討委員会はこれを受け、法案化作業をすすめている。

 報告書では①国の安全②外交③公共の安全と秩序の維持――の3分野の情報を、国の存立にとって重要な情報として「特別秘密」に指定して保全の対象とすることとした。さらに、適用の対象は行政機関のみならず、独立法人や民間事業者が作成、取得する情報までを含むとしている。しかし、「特別秘密」の範囲はきわめて曖昧であり、具体的事案を別表で列記するというが、恣意的に運用される恐れが強い。特に③については、国民にとって必要でも政府にとって都合の悪い情報を隠す手段として使われる可能性も否定できない。

 また、厳罰化も大きな特徴だ。現在でも国家公務員法における公務員の守秘義務が規定され(1年以下の懲役)ているにも関わらず、さらに重ねて5年または10年以下の厳罰を科すとしている。こうした厳罰化は公務員の意識に萎縮効果もたらすことが考えられる。それは情報公開に対してであり、私たちの取材活動に対しても予想される。取材源が法でがんじがらめにされることは知る権利のありように重大な危機をもたらすと言わざるを得ない。報道機関の日常的な取材・報道活動に支障をきたす恐れも十分にある。

 さらに、秘密漏洩の教唆(そそのかし)、扇動行為も処罰の対象としている。報告書では正当な取材活動は処罰の対象としていないが、報道機関の取材活動が漏洩の教唆と判断される可能性がないとは言えない。「正当な取材」をどう判断するか、それによっては通常の取材が罪に問われる可能性がある。

 以上、法整備に関わる数々の問題点を指摘してきたが、そもそも法整備の検討のきっかけは、2010年の沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の映像流出だった。「現場で何が起こったのか」という国民の知る権利に応えるべき情報を「国家機密」にすり換え、法整備が企図されたと考えざるを得ない。民主党は情報公開の拡充を公約に掲げ、政権の座についた。今回の法整備は明らかに公約とは逆行するものである。求められているのは、国民の知る権利と報道の自由を侵害する法整備ではなく、公約を守った情報公開法の拡充だ。秘密保全法案が国会提出されないよう強く求める。

以上