「しんぶん販売考」第5話
「しんぶん販売考」第5話
読者との「つながり」求めて
ネットとメディアが融合といった新聞の未来予想図に各社の反応はさまざまだが、新たな収入源を模索するあまり、既存のビジネスモデルの可能性まで見失ってしまっては元も子もない。いま各社は読者をつなぎ止めるため販売店改革に乗り出そうとしている。東北の中でも部数の安定している山形新聞社の販売局販売部長の槇宝一さん(51)と販売部副部長の今野幹夫さん(51)に「強さ」の秘密を聞いた。
――「強い販売」というイメージがある山新ですが、販売現場の悩みは
今野 やはり部数の伸び悩みが大きな問題です。読者の新聞離れもあるでしょうが、販売店従業員の質的な問題もあると感じています。部数が大幅に落ちることはないので「読者が減っている」という危機感が薄く、販売所長さんの意識を変えるのは難しい。
――直営の販売会社化を進めていると聞きましたが
今野 いま販売会社が14店、専売の自営店が43店、複合店が31店あります。所長(販売局から出向)が変わると大分従業員の意識も変わりますね。販売店のレベルアップは今後必要です。多くの従業員に「山形新聞」という看板を背負っているという意識を拡げています。
▽「読者を増やそう」社内で境界線はない
――社員増紙運動について聞かせてください
今野 グループ会社を含めて大々的にやっています。社長を本部長、労組委員長を副本部長として、一体感を持って「読者を増やそう」という気持ちで取り組んでいます。
槇 編集職場は増紙への意識が低かったのですが、名刺にキャンペーンのシールを貼ってもらったりしています。読者を増やすのに編集も販売も関係ない。新聞社の社員として読者を増やすのは当然だという意識がやっと根付いてきたところです。
――大都市への人口流出やインターネットの普及で部数に影響があるのでは
槇 山形はネットの普及が遅いのか、大都市のような急激な変化は起きていません。「山新ヨモーニャくらぶ」(現在3万8千世帯が登録)という会員制度を始めましたが、申込は9割がハガキによるものでネットからは1割もない。よき田舎というか、顔の見える販売・配達をして、地域の読者と対面する機会を増やしていくことが大切だと感じています。確かに業界の将来は不透明ですが、ローカル紙として地域特性に合わせて足元を固めようというスタンスです。地域の方々とじっくりやって行こうと思っています。
無購読者の増加は読者が新聞から離れていったのではなく、「新聞が読者から離れていった」と言われる。読者との「つながり」は販売店だけに求められるものではない。新聞社に働く一人一人の「つながり」が、読者が新聞に何を求めているのかという答えを教えてくれるかもしれない。
【労連副委員長・小関勝也】※新聞労連機関紙2007年5月号より