公権力によるメディアの取材手法への非難に抗議する

 新型コロナウイルス禍を巡り、全国各地でワクチン接種の状況、予約に関するトラブルなどについて報道機関各社が取材を行っています。感染が終息しない状況の中、国民の命を守る上で重要なものです。

 その一環として、毎日新聞や朝日新聞出版の「AERA dot. (アエラドット)」など複数のメディアが、政府が東京、大阪に設置し、自衛隊が運営する大規模接種センターの予約システムの運用について、重大な欠陥があることを報じました。防衛省のサイトから架空の市町村コードや接種券番号でも予約できるというシステムの脆弱性を実際に試した上で、防衛省やシステムを委託された会社に取材し「実際の接種券に記載されていない架空の番号でも予約が可能になっている」と指摘しました。岸信夫防衛相は予約システムを早急に改修する考えを示した上で、取材手法を非難し、防衛省から当該メディアに抗議の申し入れがなされました。メディア側は「情報に基づいて真偽を確かめるために不可欠な行為」「公益性の高さから報道する必要があると判断」などと説明しています。

 メディア、ジャーナリズムの重要な社会的役割は、行政の監視や施策のチェックです。今回の件を報じたメディアは、システムの脆弱性の検証後、すぐにキャンセルした過程を報道し、架空予約をしないよう防衛省のコメントも掲載しています。重大な不正行為が行われる可能性や重大な欠陥を見つけた時、独自に事実を確認し、速やかに報道するのは、メディアに求められるものです。ジャーナリズムの倫理に基づいた行動と言えます。

 日々メディアは、権力側の発表報道をうのみにせず、情報の真偽を確かめ、権力の意向に左右されない取材と報道を重ねることに努めています。国民にとって不利益になりうる施策の欠陥を指摘された行政機関や行政機関の長が、メディアが取り得る取材手法を一方的に非難することは、自由な言論活動や公権力に対する監視を威圧し、否定することにつながりかねません。取材手法の是非を巡っては、メディアが絶えず自発的に検証し、議論すべきもので、公権力から制されるものではありません。また、今回のように行政機関が、施策の欠陥を指摘したメディアの取材手法を非難することは、当該メディアのみならず、取材や報道の萎縮を招きかねず、容認できません。

 公権力は、取材や報道の否定・圧力が、メディアや市民の言論活動の阻害につながりかねないことを自覚し、厳に慎むべきです。今回、公権力である防衛省からのワクチン予約の脆弱性を指摘するためにメディアが実施した取材手法への非難について、強く抗議するとともに、防衛省のみならず政府や行政機関など公権力は、同様の行為を繰り返さないよう、強く求めます。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします

十分な時間を確保したオープンな「首相記者会見」を求めます!

 新型コロナウイルス対策に関する首相記者会見のあり方をめぐり、新聞労連、民放労連、出版労連などのメディア関連労組でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議(通称MIC)」は3月5日、change.org のキャンペーンを立ち上げました。
 国民・市民の「知る権利」を実現するため、メディアの労働組合や1人1人のジャーナリスト、市民らが共に声をあげることによって、今の状況を変えるための署名です。ぜひ、ご賛同よろしくお願いいたします。