「報復の連鎖」を断ち切ろう

―イスラエルとハマスに即時停戦を求める―

2023年11月7日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義

 パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルによる軍事衝突は、10月7日の勃発から1カ月が過ぎました。ハマスによる大規模な奇襲攻撃が非難されることは当然である一方で、約200万人が暮らすガザ地区の人口密集地を攻撃するイスラエルの報復措置は許されるものではありません。約1カ月で1万1千人以上の命が奪われる深刻な人道危機を私たちは憂慮し、即時停戦を求めます。

 パレスチナとイスラエルの間には複雑な歴史的経緯が存在し、両者の対立は根深いものがあります。ガザ地区はイスラエルが2007年から封鎖しており、「天井のない監獄」とも呼ばれています。とはいえ、ガザ地区から数千発のロケット弾をイスラエル側に発射し、多くの民間人をガザ地区に連行して人質に取るハマスの残虐行為は許されません。

 イスラエル側は、難民キャンプや病院、学校、礼拝所といった民間施設を無差別に襲う空爆や地上攻撃をエスカレートさせています。苛烈な報復は、親イスラエルの西側諸国からも「国際法や国際人道法に違反する」との声が上がるほどです。イスラエルは事実上の核兵器保有国であり、極右政党に属する同国の閣僚がガザへの核兵器使用を「一つの選択肢」と述べるなど、報復感情も先鋭化しています。複数の国連機関が発表した共同声明によると、ガザ地区で活動する国連パレスチナ難民救済事業機関の職員88人が亡くなり、単一の紛争による国連関係者の死者数としては過去最悪になりました。米国に拠点を置く非営利組織「ジャーナリスト保護委員会」によると、今回の戦闘で少なくとも30人を超える報道関係者が死亡しています。誤った報道で国民を破局に導いた先の大戦の反省を胸に刻む私たちにとって、平和を願って仕事をする仲間の死は、身が割かれるほどつらいものです。

 法的拘束力を持つ停戦や人質解放を求める決議案を審議した国連安全保障理事会では、常任理事国の米国やロシア、中国の拒否権行使で否決が相次いでいます。超大国の意向で国連が機能停止に陥る事態は、ウクライナに侵攻したロシア軍の即時撤退を求める決議案を拒否権行使で葬り去ったロシアの対応に続くものです。戦火の下で多くの市民が傷つく事態が世界で繰り返される中、イスラエルとアラブ諸国の双方と友好的関係を維持してきた日本政府は、G7議長国として停戦に向けた議論をリードする責任があります。一層の外交努力を求めます。

 古今東西、あらゆる戦争は、自己の正しさを主張する勢力のぶつかり合いから生まれます。ウクライナでの戦争が長期化し、中東情勢が悪化する中で傷つき、命を奪われるのは無辜の市民です。殺戮を一刻も早く止めるには、戦争の恐ろしさ、愚かさを為政者に知らせる必要があります。新聞労連は、「報復の連鎖」を今すぐ断ち切るため、今回の人道危機の実態を正確に伝える世界のジャーナリストと連帯します。

以上