特殊指定改廃問題に対する新聞労連の取り組み

【特殊指定改廃問題に対する新聞労連の取り組み】

第115回中央委員会(2006/04/20-21)

〔これまでの経緯〕

 約10年に及んだ著作物再販問題に対して公正取引委員会が「当面存置」の結論を出したのが2001年3月だった。4年半が経過した昨年11月、公取委は新聞業を含む特殊指定の見直し方針を表明した。特殊指定は独占禁止法の例外措置(著作物再販制度)と一体となり、新聞の「同一題号同一価格」を保証するもので、公取委はその一方の切り崩しを目標としている。
 著作物再販制度は、定価を守らない販売業者に対して新聞社側には契約違反を根拠に「取引契約の解除」を認めている。これに対して特殊指定は販売業者へ差別価格を直接禁じている。新聞の同一価格はこの2つの制度で維持されてきた。
 公取委の方針に対して、新聞協会はじめ業界団体は一斉に見直し反対を表明。2006年に入って「特殊指定廃止は新聞の戸別配達制度崩壊を招く」と読者へ制度維持に理解を求める特集記事を各社が紙面展開した。公取委は新聞協会と話し合いの場を持ち議論を繰り返してきたが、新聞以外では食品缶詰・瓶詰(2月1日)、海運(4月13日)について特殊指定を廃止してきた。公取委は次に教科書の特殊指定廃止を視野に検討を続けている。

〔購読料の弾力運用〕

 現在の新聞業特殊指定は1964年に告示されたもので公取委は1999年、この特殊指定に「学校教材用と大量一括購入」については例外・・・・とする一文を付け加えた。当時の公取委は「長期購読割引」など購読料の弾力運用を強く求めていたが、新聞業界側がこの要望には消極的だったため、学校教材・大量一括購入はその折中案といえる。
 今回の特殊指定見直しに対する公取委の姿勢は「規制緩和」を正面に掲げていた当時と変わっていない。多様な料金体系を設定する携帯電話などを例に取り上げ「新聞も同じように価格設定があるべき」の考えはそのままである。

〔特殊指定が廃止された場合〕

■販売現場の混乱■

 特殊指定が廃止となれば、販売業者側が購読料を守る根拠は著作物再販制度だけとなる。この場合、定価を守らない販売業者に対して新聞社側は契約違反を根拠に「取引契約の解除」とすることができる。しかし実際には取引を止めて、すぐに別の販売業者を発足させることは困難で、新聞社側が取引停止するまではかなりの時間がかかる。
 購読料値下げを複数の販売業者で同時多発的に行えば、該当地域に別の販売業者を発足させることはまずできない。よって新聞社側が定価維持を販売業者側に求めても、事実上は販売業者の裁量となる可能性が極めて高い。全国紙は「朝夕刊セット」と「統合版」とで異なる購読料を定めているが、3大紙は同じ価格。特定のエリアで一つの販売業者が値下げをしてセールスを進めれば、ほかの題号の販売業者も同調した値下げを余儀なくされる。
 現在は販売区域を正確に区分したテリトリー制で販売業者ごとにエリアが重複しないように定められている。テリトリー制は販売業者と新聞社との間で営業区域を厳密に取り決めたものだが、新聞社側が決めた購読料の維持が困難となった販売業者は次に販売区域の拡大に向かう。エリアが広くなればそれだけ販売部数を増加が可能となり、こうなれば同じ題号を扱う販売業者同士の競争となる。

■販売業者と新聞社の生き残り競争■

 値下げ競争によって販売業者は値下げ額に比例した減収となり、立ち行かなくなった販売業者は廃業となる。これまで都市部では「専売店」として題号ごとに販売業者が分けられていた。廃業となった販売店が増えれば、新聞社側はその区域を別の新聞販売店へ配達を委託する。こうなると存続した販売店は「専売」から複数の新聞を扱う「合売」へ移行し、さらに隣接する販売店との値下げ競争が続く。
 このように販売業者が値下げ競争で淘汰されるが、ここに至るまでの期間には一時的に配達の空白区域が出てくる。新聞社側がこの混乱の中でこれまで通りの戸別配達を販売業者側に求めるのは困難となる。

■地方の混乱■

 地方では全国紙の値下げ攻勢が予想される。これまでのセールスは景品提供と無代紙(契約月数に比例したサービス購読)が主な手段だった。これに購読料の値下げが加わると、資本力が大きい全国紙の部数拡大は容易となる。持久戦に持ち込まれた場合、地方紙が次々と倒れるのは時間の問題となる。
 山間部や離島では販売業者が値上げを求め、値上げでも採算が取れない地域は配達を断る場合も予想される。こうなると配達手段は郵送か宅配業者。読者は購読料に加えて輸送費の負担も余儀なくされ、郵送の場合は1日遅れとなる。
 また地方で予想される「全国紙の部数拡大」のほかに、採算が見込めない特定の地域からは全国紙の撤退が考えられる。地域によって購読できる新聞が限定され、多様な新聞が読める環境はここからも崩れる。

■乱売合戦で失われる読者の信用■

 販売業者が前記のような大混乱に陥ると、新聞社も当然のことながら存亡がかかり、実際に倒産する新聞社も現れる。消費者団体にしてみれば「安いに越したことはない」と思われるが、果たしてその通りか。戸別配達される地域が住宅密集地など配達効率の良い地域に限られ、読める新聞が限定されれば本当に困るのは読者。また多くの新聞が生き残りを懸けて値下げ競争に陥り、これまで通りの紙面を維持が困難となる。
 特殊指定廃止で最終的に「戸別配達」は崩壊することが予想されるが、その前に「乱売合戦」が起こる。この乱売合戦で新聞が読者の信頼を失う。新聞が危機的状況と言われているのに、購読料をめぐる混乱が加われば新聞そのものがマスメディアから脱落するのは必至。言論機関としての新聞が立ち行かなくなり、危機にさらされるのは「知る権利」「表現の自由」。さらに「民主主義」。最終的に困るのは国民である。

〔ルールを順守した販売正常化〕

 新聞協会は「特殊指定廃止→戸別配達制度の崩壊」と訴えているが、その前に起きる「乱売合戦」が重要な問題となる。特殊指定が販売業者へ差別定価を直接禁じているため、この規制が外れて最初に起きるのが値下げ競争である。
 現在でも販売現場で横行している強引なセールスで読者の反発を買っている上に、乱売が加わると新聞の信頼回復は絶望的だ。乱売合戦が販売現場に混乱を招く引き金となることを認識しなければならない。
 「強引なセールス」「規制を超えた景品」は新聞社の部数第一主義が根本にある。この考えからの脱却が販売正常化の第一歩となることは昔から言われてきた。また新聞社と販売業者の「偏務契約」の是正を進め、同時に販売業者はルール順守による読者の信頼回復が求められる。

〔新聞労連の姿勢〕

 新聞協会は「特殊指定廃止→戸別配達の崩壊」と訴えている。戸別配達は読者にとって身近な問題だが、実際には「特殊指定廃止→乱売合戦→販売現場の混乱→販売業者・新聞社の生き残り→戸別配達の崩壊→知る権利、表現の自由の危機→民主主義の崩壊」と戸別配達崩壊の先に大きな危機が待ち構えている。
 新聞労連はこれまでの部数第一主義を改め販売正常化の早期実現を業界内に訴える必要がある。戸別配達維持という目標は新聞協会と同じでも、実際に立ちはだかる問題を避けることはできない。
 1998年の再販問題で新聞労連は「地方議会への意見書採択」を各地で求めた。そして2001年には業界を挙げた反対運動に新聞労連も加わった経緯がある。著作物という広い範囲の再販廃止にはMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)に運動が結集した。このとき公取委は「著作物再販廃止」を目標に、最終的には独占禁止法の改正を視野に入れていた。
 今回問題となっている特殊指定は業界ごとの「不公正な取引方法」を定めた告示。業界の個別事情を考慮したもので、指定そのものは公取委の専権事項となっている。新聞業の特殊指定は当然のことながら新聞に限定した内容となっており、制度維持を政治力に頼る姿勢が世論の支持を得られるかは疑問である。
 この問題は内容が複雑で、読者・市民の理解を得にくい側面がある。しかし新聞労連内の組合員の問題に対する意識が低いことが、労組にとって最大課題といえる。2001年の著作物再販問題でもこの点は指摘されていた。組合員への問題意識の周知を図ることが第一である。

〔取り組み〕

★特殊指定維持中央集会(仮称)5月23(火)-24日(水)・東京

初日・全体集会、2日目・公取委、新聞協会などへの要請
特殊指定についてディスカッションを中心に開催し現状認識を深める

★特殊指定問題のリーフレットの配布

配布対象は組合員とするが一般にも配れるスタイルで制作中。5月8日(月)から発送開始予定。

★組合員対象の署名

特殊指定問題の周知を目的に実施し、5月24日に公取委へ提出予定
日販協(日本新聞販売協会)では戸別配達スタッフなど関係者を対象に実施中

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