第120回定期大会報告

大会宣言

 東日本大震災と福島第一原発事故から1年4カ月、今なお多くの被災者が困難な生活を強いられる一方、原発再稼働に抗議して国会や首相官邸を取り囲む市民の声は大きなうねりとなり、全国へ広がりつつあります。消費税増税、在日米軍基地へのオスプレイ配備など政府の姿勢に批判が高まり、労働法制のゆがみや長引く不況によって労働者の置かれた環境も厳しさを増しています。

 こうした中、新聞労連は「労働の尊厳を守り抜こう」をメーンスローガンに、第120回定期大会を東京・文京区民センターで開きました。

 大会で私たちは二つの新しい仲間を迎えました。「関東新聞販売労働組合」と「東京スポーツ新聞社労働組合」です。東海林委員長は「それぞれが厳しい状況の中、労連への加盟を決断した。いま私たちに必要なのは、新聞労連に結集して未来を切り開くことだと、二つの組合があらためて教えてくれた。未組織の労働者にこれまで以上に強く働きかけ、大きな組織をつくるために邁進しよう」と一層の組織拡大を訴えました。

 また、秘密保全法制について東海林委員長は「取材・報道が大きく制限され、知る権利が侵害される、とんでもない法案。かつて廃案に追い込んだ『スパイ防止法』を上回る危険な法案を、みんなの力で葬り去ろう」と呼び掛けました。

 労働の尊厳を守る、あるいは奪われた尊厳を取り返すために、私たちが闘っている争議には、全面勝利解決へ向けて全力を注がなければなりません。

 ブルームバーグを不当解雇された新聞通信合同ユニオンの松井さんは、裁判所から和解の打診を受けたが「ここで和解したら会社は調子に乗って『記者の能力不足』を演出したPIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン=能力改善計画)による解雇を繰り返すだろう。理不尽な解雇に屈するよりも判決をいただきたい」と、断固闘う意思を表明しました。

 組合つぶしと闘い続ける宮古毎日労組は、過去2回にわたる労働委員会の救済命令にも会社の態度が変わらず、契約社員の正社員化や団交の正常化を目指して労働委員会に救済を申し立てています。恩川委員長は「先が見えないが、一生懸命闘っていく」と、あらためて強い決意を述べました。

 UPC(ユニオン・オブ・プレスクラブ=日本外国特派員協会労組)は、公益法人化や事業縮小を口実にした大量解雇の危機に瀕しています。現在、団交拒否で労働委員会に救済を申し立てており、久保委員長は「雇い止めが強行された場合は仮処分申請を行う」として、労連のさらなる支援を求めました。

 こうした数々の争議は長期化も予想されますが、労連の団結の力で絶対に勝利しましょう。

 報知新聞労組が取り組む塚野さん過労死裁判は、9月に控訴審の判決を迎えます。逆転勝訴を確かなものにするため、裁判所に公正な判決を求める要望書を全国から送るなど、最後の一押しとなる運動が必要です。「過労死防止基本法」制定のための署名運動とともに労連を挙げて取り組みましょう。

 そのほか討論では、宮古新報労組が組合結成後に初めて会社と交わした賃上げ合意について、また東京労組が現在継続中の契約社員や派遣社員の春闘交渉について報告しました。河北仙販労組は、業界内で今も絶えない旧態依然とした拡張行為、部数第一主義の弊害を指摘。読売労組はワークライフバランスや労連財政について問題提起しました。琉球新報労組はオスプレイ配備について「墜落事故の相次ぐ危険な軍用機の導入は断じて許されない」と述べ、宮崎日日労組は過去の組合分裂の歴史を振り返り「労連・地連の仲間の支援があったから乗り越えられた」と、争議組合へのより一層の支援を呼び掛けました。時事労組は非正規労働者の組織化の取り組みを紹介。山陽労組は労働委員会のあっせんを活用して「一時金を7カ月分支給する」とした会社の約束を再確認させた闘いを報告しました。

 また、産業政策研究会は、第2期中間報告書「新聞再デザイン~あすを拓かにゃイカンぜよ」をまとめました。櫛引座長は「さまざまな提言・提案はどれも即効薬ではありませんが、目先の実績に走らず、深く広く悩み、必死に努力することこそが未来につながる」と提案しました。

 東日本大震災の取材活動に伴う「惨事ストレス」アンケートでは、回答者の22%が1年経過しても、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になってもおかしくないレベルのストレスを抱えていることがわかりました。今後も「惨事ストレス」への認識を深め、対策を進める必要があります。

 労連役員も交代の時期を迎え、東海林委員長と田中副委員長の退任に伴い、新たに京都労組から日比野労連委員長、琉球新報労組から米倉労連副委員長が選出されました。

 私たちは大会での議論を胸に刻み、働く者の権利と尊厳を守るため、新しい体制のもとで一層、奮闘することを宣言します。

2012年7月20日 新聞労連第120回定期大会

日比野委員長(京都)を選出

労働の尊厳を守り抜こう

 新聞労連120回定期大会は7月19、20日、東京都の文京区民センターで開いた。東京スポーツ労組と関東新聞販売労組を仲間に迎え入れ、「労働の尊厳を守り抜こう」をメインスローガンに団結と連帯で労働基本権やメディアの危機に立ち向かう新年度方針を決めた。2年間務めた東海林智委員長(毎日)と田中伸武副委員長(中国)が退任し、新たに日比野敏陽委員長(京都)と米倉外昭副委員長(琉球)を選んだ。松永康之輔書記長(河北)は再任。

 東海林委員長は「3・11などのイベントリスクに過剰反応して人件費を切り下る経営者が目につく。JAL解雇判決など司法の反動化とも闘わねばならない。メディアの未来を奪う秘密保全法制をつぶすのも私たちの使命」と呼びかけた。

 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)の平川修一事務局長(出版労連)、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の阿部裕事務局長が来賓あいさつ。全国労働委員会民主化対策会議の統一候補として中労委労働者委員に立候補する新聞労連顧問の水久保文明さん(毎日労組OB)の決意をこめた運動報告、JAL不当解雇撤回裁判原告団の宝地戸百合子さんの訴え(2日目)もあった。

 新聞労連の協力で東日本大震災の取材体験者らを調査した「報道人ストレス研究会」(代表=松井豊・筑波大人間総合科学研究科教授)の福岡欣治・川崎医療福祉大准教授が調査結果を中間報告。被災5新聞社120人のアンケートからPTSDリスクの高い人が22・4%を占めることなどが示された。(調査結果は機関紙9月号で紹介予定)

 産業政策研究会の研究、労連ジャーナリスト大賞の見直しも報告された。

 11年度活動報告、財政報告、実績批判、12年度運動方針案、一般会計1億9165万円(前年比6・5%減)の12年度予算案などを原案通り可決、承認した。

 争議支援特別会計から財政支援すべき争議組合に、現在の宮古毎日新聞労組(8人)のほか、集団訴訟に発展する可能性の強い日本外国特派員協会労組=UPC(45人)と新聞通信合同ユニオン日刊建設新聞支部(3人)を加え、争議基金の大半の5億円を無利子の決済性預金から譲渡性預金(年利0・07%)に切り替えることも承認した。

 大会議長団は溝手敦彦(読売)、小畑浩(中国)の両氏が務め、内藤景太青女部長(道新)が力強い団結ガンバローで締めた。

 大会に先立つ18日には隣の文京シビックセンターで第5回拡大中執と全国役薦委を開き、夜遅くまで熱のこもった討議があった。