特別決議
新聞経営者は、労働基準法第1条の精神を遵守せよ

 新聞産業を取り巻く厳しい状況を背景に、経営は私たちに支払うべき賃金に、様々な理由をつけて削減提案を繰り返している。近年、特に目立つのが深夜労働の割増賃金の一部廃止、減額提案である。

 労働基準法は、憲法で保障された健康な生活を労働によって損なうことがないように、長時間労働や深夜の労働を禁止し、休日や休憩、年次有給休暇の付与を義務付けている。
 そして同法37条で定められる時間外、休日及び深夜の割増賃金は、使用者が業務の都合によってやむを得ず労働者の身体に通常以上の労働負荷を強いる行為に対するペナルティ(罰金)である。

 とりわけ深夜労働は、生活習慣病発症のリスクを高めることが古くから指摘されている。だからこそ夜勤労働者には日勤者の2倍にあたる半年に一度の健康診断が義務付けられている。
 また、長時間労働については、脳・心臓疾患や精神障害はもちろん、胃十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、腰痛、月経障害などの健康被害を誘発する事が科学的に証明されている。さらに疲労が蓄積しやすいことから事故やケガを起こす原因ともなっている。

 特に新聞産業においては、一刻も早くニュースを読者に届ける社会的使命から、深夜労働は避けられない。だからこそ、身を削って過酷な労働に耐え、変則的な生活を強いられるため十分な疲労の回復が必須だ。働く者にとって深夜割増手当はそうした心身のケアのための費用でもある。

 私たちは戦後すぐ、労働組合を立ち上げた当初から深夜労働に対する十分な手当を要求し続けた。労使が共通認識を持ち、負荷の高い労働を強いるペナルティ(罰金)として、かつ疲労回復の費用として、深夜勤手当を労使合意のもとで築き上げてきた。
 しかし、新聞経営者たちはこの数年、このような科学的要請に基づいた、長い議論と交渉の歴史の中で確立した労使合意を一方的に無視し「日勤労働者との格差が大きい」「夜勤は今や当たり前の働き方になっている」「他社の割増率は低い」あるいは「支払い能力」などの理由で廃止や削減を図ろうとしている。これらの理由はどれも非科学的であり、深夜勤を伴う過酷な業務の対価として労使が共に必要と認めあってきた労働条件を根拠なく否定するものである。これは働くものの命と健康を危機に晒す愚挙であり、私たちは到底容認することはできない。

 労働基準法第一条には、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とその理念が謳われ、さらに同条2項では「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」とある。特に深夜割増の25%という基準は国際的にみても低額であり、早急に引き上げの法改正が必要なレベルだ。
 しかし、経営者たちの提案は、同法37条の最低基準である25%に割増率を引き下げる提案も目立ち、明らかに「この基準を理由として」不利益変更提案を行っている。労基法第1条は罰則の無い訓示規定だが、だからと言ってこれを無視した提案を平然と行う経営者たちの行為は、法に違反するという批判を免れることはできない。報道機関が、法に反し、率先して労働者の健康を脅かすことは、絶対に許されるべき事ではない。

 2023年4月から、月60時間を超える時間外割増賃金の中小企業への猶予措置が終了し、すべての職場で50%の割増賃金が適用される。こうした時代の要請に逆行して私たちの命と健康を危険に晒すような労働条件改悪を進める経営姿勢は、必ず国民の批判を浴び、ひいては新聞産業の信頼性をも貶める行為だ。加えて働く者がこうした経営の無理解に失望を感じて次々に離職し、労務倒産を招きかねないでもあることを、新聞経営者は深く自覚すべきだ。
 深夜勤手当や時間外手当だけではない。すべての手当には、職場の要求に基づき労使合意を積み上げた歴史がある。
 私たち新聞労働者は、2023春闘を闘う上で、物価高騰に見合うだけの賃上げを要求する。深夜勤や時間外手当はじめ各種手当の廃止や削減は、賃上げの労働条件改善効果を台無しにする。とりわけ賃上げと引き換えに手当の削減を提案するような愚挙は絶対に許されない。労基法1条2項が示す通りに全ての労働条件について「その向上を図るよう」努力し続けることを、強く要求する。


以上、決議する。                
2023年2月1日 新聞労連 第141回臨時大会