ウクライナ戦争の早期停戦を求める―民間人を戦火に巻き込むな―

2023年2月24日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義

 2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して、1年が過ぎました。今なおロシアはウクライナの首都キーウなど、市街地への空爆を繰り返しています。昨年12月31日のキーウでの空爆では、朝日新聞記者が滞在するホテルが被弾し、同社の記者1人が負傷しました。平穏に暮らす権利を持つウクライナの民間人や、戦争の実態を世界に伝える報道関係者を危険にさらす空爆の即時停止をロシアに求めると同時に、早期停戦の必要性を訴えます。

 国連人権高等弁務官事務所によると、開戦以来、ウクライナの民間人の犠牲者は少なくとも7000人を上回り、実態はさらに多いとみられています。昨秋以降、ロシア軍は発電所などのインフラ施設への攻撃を強めており、多くの民間人が厳しい真冬の寒さに震え、終わりの見えない戦争の行方に不安を募らせています。平和な日常を一刻も早く取り戻すため、国際協調に基づく停戦を早期に実現させる必要があります。

 ロシア、ウクライナ両国はSNSや報道機関を巻き込んだ情報戦、サイバー戦争に力を注ぎ、通常兵器での戦闘と併せて「ハイブリッド戦争」と呼ばれています。世論操作が日常的になり、事実が見破りにくくなる中、戦地に身を置き、自らの耳目で正確な情報を伝える報道関係者に深い敬意を表します。一方、戦争が長期化することで、報道する私たちの間に「戦争慣れ」が広がっていないでしょうか。尊い命が日々、失われていることへの想像力を絶やさず、戦争のない、平和な社会を実現するための報道の役割を、私たちは自問し続けます。

 大みそかの空爆で負傷した朝日新聞記者はツイッターで自らの消息を伝えましたが、同じホテルの室内にいた同僚はツイッターで「私は無事でした。一瞬の差でしたが」と発信しました。報道各社は、戦争取材の危険性を重く受け止め、現地で取材に当たるスタッフの安全確保を徹底するべきです。帰国後に懸念される惨事ストレスによる心身の不調は、すぐに現れるものばかりではありません。命と健康を守るための長期的なケアが必要です。

 世界最大の核兵器保有国であるロシアのプーチン大統領は、核兵器攻撃を示唆し、開戦1年を前に米露間の核軍縮合意である新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を表明するなど、国際社会を威嚇し続けています。日本政府は、敵基地攻撃能力の保有容認に舵を切り、抑止力への依存を強めていますが、世界最初の戦争被爆国として停戦に向けた動きをリードする責務があります。今年は5月に先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催も予定されています。核兵器廃絶と平和構築に向けた真摯な努力を日本政府に求めます。