「しんぶん販売考」第1話

「しんぶん販売考」第1話

特殊指定(上)

▽規制緩和の波の中で

 「2010年、公取委は必ず再販・特殊指定制度の見直しを打ち出してくる」。
 昨年12月、札幌で行われた新聞印刷共闘会議。講演した山田健太・専修大助教授はそう力説した。消費税引き上げの可能性なども指摘した上で、持論を続けた。「あと5年で新聞業界は大きな岐路に立つ」
 新自由主義の流れの中で、公取委が押し進める過当なまでの競争社会。新聞業界は、激しい規制緩和の波涛がうずまく中で、やっと顔をのぞかせている小岩のような存在だ。「同一題字・同一価格の堅持」「多様な言論を守る」。孤塁を守れるか否かは「販売正常化実現がカギ」と新聞労連は主張してきた。
 しかし、昨年6月、公取委が見直しを撤回すると、業界は「危機」を夢のように忘れ去ってしまったように思える。見たくない問題からは目を逸らす、そんないつもの習性なのか。
 新聞業界が「目をそらしたい問題」は販売分野に多い。今シリーズでは、間もなく岐路に立つ新聞業界のために、あえて販売問題に目をこらしたい。

▽特殊指定は新聞を含め3分野のみ

 独禁法では事業者が「不公正な取引方法」で売買することを禁じているが、公取委が具体的に不公正な取引内容を定めている。それには、すべての事業分野で適用される「一般指定」、特定の事業分野だけに適用される「特殊指定」があって、新聞をはじめ物流と大規模小売業の3分野が特殊指定になっている。
 1999年見直しされた現在の新聞特殊指定では、次の行為を禁止している。①新聞発行本社が地域又は相手方により多様な定価・価格設定を行う(学校教育教材用や大量一括購読者向けなどの合理的な理由がある場合は例外)②販売店が地域又は相手方により値引き行為を行う③新聞発行本社による販売店への押し紙行為―の3つだ。

▽激しい販売競争がきっかけ

 そもそも公取委が新聞業を独禁法の適用除外としたのは、「多様な言論を守るため」というわけではなかった。新聞の特殊指定は、半世紀も前にさかのぼらなければいけない。
 1955年は、新聞販売史上に残る激戦の年だった。新聞販売店は戦中の統制により共配の規制を受け続けていたが、52年にその規制が解除され専売制が復活すると、一気に激しい販売競争が繰り広げられるようになった。年々激しさを増す競争の中、大手新聞社の販売攻勢に喘ぐ地方紙は新聞を特殊指定商品にして乱売に歯止めをかけようと動き出すが、これに対して大手紙は「自由競争を抑圧するもの」と退ける。しかし、半値以下の定価設定や2億円のクジをつけて売り込む大手紙の販売行為に対し独禁法違反の問題が浮上。これを受けて新聞協会も法的措置も止むを得ないと決議。55年12月、公取委は、新聞業を「特殊指定」し、これによって値引きや景品類、無代紙の提供は一切禁止された。
 自主的な規制、自助努力で解決できなかったため公取委に「すがる」格好になった新聞業界。その体質は変わっただろうか。
二度の「正常化宣言」など自主的な改善策を示してきたが、その後も新聞社は公取委からたびたび警告を受けている。そして、公取委は2005年11月、特殊指定の見直しを宣言する。

【労連副委員長・小関勝也】※新聞労連機関紙2007年1月号より