ブルームバーグ第二次解雇事件・東京地裁判決についての声明

2015年5月28日
日本新聞労働組合連合
新聞通信合同ユニオン
弁護団弁護士
今泉義竜/小木和男/菅俊治

(1)東京地方裁判所民事11部(鷹野旭裁判官)は、2015年5月28日、ブルームバーグ第二次解雇事件の裁判において、労働者側勝訴の判決を出した。
 本件は、通信社ブルームバーグの記者がPIP(業績改善プラン)の末に能力不足を口実に解雇された第一次解雇訴訟において、一審、二審ともに労働者が完全勝訴したにもかかわらず、会社側が当該労働者を復職させることなく再び解雇を強行した事件である。会社側は、第一次解雇訴訟の高裁判決前の和解協議の中で、労働者に対し記者職ではなく給与が半減する倉庫業務での復職を提案し、労働者側がこれを拒否するや、拒否したこと自体をもって第二次解雇を強行した。そして、第一次解雇訴訟について労働者側勝訴判決が確定した後に、その判決の効力を失わせるための「請求異議訴訟」を労働者に対して起こしてきたのが本裁判である。

(2)本訴訟において会社側は、労働者が倉庫業務への復職提案を拒否し、復職に関する会社との協議に応じないことをもって、「記者職以外の職種で勤務する意思のないことを明らかにし、記者以外の職で労務を提供することを明確に拒否した」として本件第二次解雇の理由とした。このことについて、地裁判決は、「被告(労働者)において、本件提案を応諾し、本件提案に係る復職条件を前提とする協議に応じる法律上の義務を負うとか、そうでなくても、協議に応じてしかるべきであったなどと解すべき根拠は乏しい」として、復職提案に応じる義務を否定した。そして、「本件提案に応じるか否かは、基本的には、被告(労働者)の自由な判断に委ねられるべきものであり、被告(労働者)がこれに応じない旨の意思を明らかにしたからといって、そのこと自体に何ら責められるべき点はない」などとした。その結論として、本件第二次解雇について、会社の主張する解雇理由に客観的合理性はなく無効であると断じた。

(3)そもそも本件は、会社側がおよそ法的には成り立ちえない第二次解雇を強行してきたものであり、地裁判決は当然の結論である。ブルームバーグは、本判決を受け入れ、控訴することなく直ちに当該労働者を記者として復職させるべきである。

(4)ところで、労働時間規制の適用除外(いわゆる「残業代ゼロ」)や派遣の自由化など、今国会で労働法の規制破壊を狙う政府は、来年には「解雇の金銭解決制度」、すなわち違法な解雇であってもわずかな手切れ金を払えば雇用関係を解消できる制度の導入を狙っている。本件訴訟の会社側代理人は、解雇の金銭解決制度を推進する立場で政府の産業競争力会議に呼ばれて意見を述べている。
 昨今、ブルームバーグのみならず、IBMなど外資系企業を中心に、「能力不足」を口実にした解雇が横行しており、紛争が頻発している。解雇権濫用法理(労働契約法16条)からすれば、現在横行しているこのような解雇のほとんどが違法・無効である。しかし、法を無視して解雇を強行する会社が日本の労働市場に横行し、それを追認するための法制度改悪が進められようとしている。
 現在の日本に必要なのは、規制の緩和による際限なき雇用破壊ではなく、これまで先人が築き上げてきた労働者を守るための規制をさらに強化し、安定した雇用を取り戻すことである。
 われわれは、ブルームバーグに対し日本の労働法を遵守することを求めるとともに、このような解雇を合法化するような雇用破壊を実現させないよう力を合わせて取り組む決意である。

以上