労連声明:「新型コロナ」を理由にした批評の封殺に抗議する

 愛媛県の中村時広知事が3月27日の記者会見で、県のPR施策を批評する愛媛新聞の記事に対し、「タイミングというものがあると思う。いま県としても(新型)コロナ対策に集中している最中でありまして、いまこのタイミングで出ると問い合わせなどが県の方に来ますので対応しなければならない。そういった影響を是非お考えいただきたい」と発言しました。

 中村知事の発言は、批判記事の掲載を牽制するものです。新型コロナウイルスの感染拡大という、いわば「緊急事態」を理由にして、あらゆる批判や言論を封じ込めようとする発言であり、看過することはできません。言論の自由、報道の自由に対する侵害であり、抗議します。

 中村知事が会見で取り上げたのは、愛媛新聞が3月26日付朝刊から3回連載で掲載していた「再考 まじめえひめ 識者に聞く自治体PR」です。この連載は、「介護・看護時間の長さ全国1位」や「彼氏がいない独身女性の多さ」などのデータを示して「愛媛県民はまじめ!」とくくる動画を配信した愛媛県のPRプロジェクト「まじめえひめ」の問題点を指摘したものです。問題点を認めぬまま、3月末に配信を停止する県の施策を再考するもので、時宜にかなったまっとうな論評です。中村知事の主張する論理がまかり通れば、「新型コロナウイルス対策をしているから、森友学園への国有地売却に関する公文書の改ざん問題や、桜を見る会の問題についても、政府を追及するな」ということにもつながります。

 「危機」にあっても、公権力の信頼性や歪みをチェックし、指摘することは報道機関の大切な役割です。特に「まじめえひめ」のプロジェクトで問題になった「歪んだ女性像の押しつけ」や介護の美徳化は、危機対応のときにこそ、ひずみが生じやすく、公権力が注意すべきテーマです。

 「新型コロナ」を理由に、3月28日の安倍晋三首相の記者会見で質問を求める際に声を上げることが規制されましたが、「危機」を理由にした過度な規制は危険です。為政者に強く自省を求めるとともに、報道の現場が萎縮せず、国民・市民に正確な情報を届ける報道機関としての役割を果たせる環境をつくるよう、新聞労連としても努力していく考えです。

2020年4月7日 
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南  彰